エンゼルスがこれまで演じてきた、ファンにとって忘れられない試合を紹介したい。
- 崖っぷちのチームが演じたMLB史上最大の逆転劇:2002年ワールドシリーズ第6戦 (2002年10月26日)
- 161試合目、9回土壇場での大逆転:2015年レギュラーシーズン、対テキサス・レンジャーズ (2015年10月3日)
崖っぷちのチームが演じたMLB史上最大の逆転劇
2002年ワールドシリーズ第6戦 対サンフランシスコ・ジャイアンツ (2002年10月26日)
エンゼルス 6-5 ジャイアンツ
エンゼルスタジアムで観戦すると、プレイボール直前にエンゼルスの過去の試合のオマージュビデオが流れるが、毎年そのハイライトは2002年のワールドシリーズ第6戦と第7戦である。
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特に第6戦は、負けたらシリーズ敗退という崖っぷちのチームが演じたMLB史上最大の逆転劇だった。
チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ジャイアンツ | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 1 | 1 | 0 | 0 | 5 | 8 | 1 |
エンゼルス | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 3 | X | 6 | 10 | 1 |
勝: ブレンダン・ドネリー(1-0) 敗: ティム・ウォーレル(1-1) S: トロイ・パーシバル(2)
本: SF – バリー・ボンズ(4) ショーン・ダンストン(1) LAA – ダリン・アースタッド(1) スコット・スピージオ(1)
2002年ワールドシリーズ第6戦ハイライト(YouTube動画)
エンゼルス、ジャイアンツともワイルドカードから勝ち上がったチーム同士であった。これはワイルドカード制度が始まってから初めてのこと。ジャイアンツには前年73本のホームランを打った全盛期のバリー・ボンズが君臨しており、阪神タイガースからメジャーに挑戦した新庄剛志もいた。
4回までは投手戦だったが、そこからジャイアンツの長距離砲が火を吹く。この試合、管理人は三塁とレフトの中間あたりの席で観戦していたのだが、6回に今シリーズで神がかった投球を見せていたフランシスコ・ロドリゲスから、バリー・ボンズがシリーズ4本目の本塁打をライトへ叩き込んだのを見て「もうダメだ」と思ったものだ。ボンズはこのワールドシリーズで30打席で21回も出塁し(7つの敬遠を含む)、17打数8安打、4ホーマー、2二塁打と手がつけられなかった。
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7回表を終わって、0対5とジャイアンツが圧倒的に優勢となった。野球の記録サイトBaseball Referenceによると、この時点でジャイアンツが勝つ確率は96%と計算されていた。
7回裏、先頭打者が倒れエンゼルスに残されたアウトは8つ。が、そこから5番グラウス、6番フルマーが連続ヒット。ジャイアンツとしては、この時点で5点差あるのでまだ慌てる局面ではないが、マウンドへ行ったベイカー監督は無失点の先発オルティスを引っ込めた。その際、ベーカーは「ワールドシリーズ優勝試合の勝利投手の記念」とばかりに、マウンドから去るオルティスにゲームボールを手渡した。ベーカー始めジャイアンツの誰もが「もう勝った」と思っていたのだろう。この時テレビではジャイアンツのベンチ裏の優勝祝賀の準備の様子が映し出されていた。
代わったフェリックス・ロドリゲスが迎えたのは7番スピージオ。スイッチヒッターで、レギュラーシーズンのホームランは12本とそれほど長打力のある選手ではない。しかしスピージオがカウント3-2から低めの球をすくいあげると、打球は高々と上がり、ライトスタンドぎりぎりに飛び込むシリーズ1号の3ランホームランとなった。
この1発で球場のムードが一変した(それでもまだ2点リードするジャイアンツの勝利確率は93%と計算されていた)。続く8回裏、先頭の2番アースタッドが1-1からライトスタンドへシリーズ1号となるソロ本塁打を叩き込みついに1点差。続く3番サーモンはセンター前に落とす。さらに4番アンダーソンの打球はレフト線へフラフラっと上がったポテンヒットとなる。しかも打球を追った左翼手バリー・ボンズは足がもつれてボールが手につかずツーベースヒットにしてしまう。無死2、3塁と勢いは完全にエンゼルスだ。
ジャイアンツもここでクローザーのロブ・ネンを繰り出し必死の防戦。打席に入るは5番グラウス。グラウスはネンの4球目をフルスイングすると、打球はレフト・センター間を真っ二つ。三塁、二塁から次々とランナーがホームへ帰り、6-5とついに逆転である。
迎えた9回、エンゼルスの守護神トロイ・パーシバルがマウンドに上がる。きっちり3人で片付け、エンゼルスの球団史上、いやMLB史上に残る大逆転劇が完成したのだった。
翌第7戦、前日の勢いに乗ったエンゼルスは4対1で勝利し、チーム初のワールドシリーズ制覇を成し遂げた。
MLBの通算本塁打記録を持ち、史上最高の選手と言われたバリー・ボンズだが(後年、薬物疑惑で名声を落としてしまったが)、自身初のワールドシリーズ制覇の最大のチャンスを逃し、結局引退までチャンピオンリングを手にすることはなかった。なお、この試合、新庄剛志の出番はなかった。
すでに16年前の出来事になってしまったが、このワールドシリーズ制覇を経験した選手で現役を続けているのは、20歳の新人だったフランシスコ・ロドリゲス(フィリーズとマイナー契約)と、第7戦で先発し勝利投手となった、同じく新人のジョン・ラッキー(現在FA)の二人だけになってしまっている。
特にこの2002年のロドリゲスは、プレーオフ11試合に登板し、18.2回で28奪三振を奪うというとんでもない奪三振マシンとなっていた。信じられないほどキレキレのスライダーで、打者が皆ワンバウンドになる球を振って三振していくのは今でも管理人に鮮烈なイメージを残している。
161試合目、土壇場での9回大逆転劇
2015年レギュラーシーズン 対テキサス・レンジャース (2015年10月3日)
エンゼルス 11-10 レンジャース
この年、ア・リーグ西地区はアストロズ、レンジャース、エンゼルスが最後まで激しく優勝を争い、残り2試合になってもまだ決着がつかなかった。優勝に最も近いのはレンジャースだったがエンゼルスもまだワイルドカード進出のチャンスが残されていた。
そして敵地ダラスで迎えた最後の4連戦。第3戦はレンジャースは勝てばリーグ優勝。エンゼルスは負ければワイルドカード争いからも脱落というお互いに負けられない試合となった。
チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
エンゼルス | 0 | 0 | 0 | 1 | 4 | 1 | 0 | 0 | 5 | 11 | 17 | 2 |
レンジャース | 0 | 1 | 0 | 0 | 4 | 3 | 2 | 0 | 0 | 10 | 13 | 1 |
勝: ジョジョ・レイエス(1-0) 敗: ロス・オーレンドーフ(3-1) S: ジョシュ・スミス(5)
本: LAA – エリック・アイバー(3)、コール・カルフーン(26)、TEX – ジョシュ・ハミルトン(1,2)、ルーグンド・オドール(16)
ハイライト(YouTube動画)
試合は5回にエンゼルスが4点を勝ち越して今日は楽勝かと思いきや、その裏すぐに4点を取り返されてあっという間に同点。その後、エンゼルスは繰り出す投手が次々と打たれ、5回、6回、7回のわずか3イニングでレンジャースに9点も献上。しかもエンゼルス時代に全くの鳴かず飛ばずで、あげくのはてに薬物問題でチームを去ったハミルトンにホームランを2発も食らってしまう。ちなみにそのハミルトンの給料は移籍後も事実上エンゼルスが負担していた。
そして9回表を迎えたエンゼルスは6-10と4点のビハインド。野球の記録サイトBaseball Referenceによると、この時点でエンゼルスが勝つ確率は1%しかないと計算されていた。勝てば西地区優勝が決まるレンジャースはベンチ裏できっとシャンパンファイトの準備をしていたに違いない。
しかしエンゼルスは先頭のアイバーがライトへソロホームラン。これで7-10。まだまだ追いつくには遠い。続いて2番カルフーンもライト上段に初球を叩き込んで8-10。これでほんの少しチャンスが出てきたか・・・ところが期待の3番トラウトはショートゴロでワンアウト。
さらに4番のプーホルスも1塁後方にフライを打ち上げる。ところが、フライを深追いした2塁オドールが1塁ナポリと交錯して、まさかの落球。このヒットでプーホルスは2塁に達する。このプレーが流れを変えるきっかけになるのか・・・・(高校野球の伝説の名試合、星陵対簑島を思い出した)。
しかし5番マーフィーは三振でついにツーアウト。あと1人に追い込まれる。打順は一発はあるが不調気味の6番クーロン。クーロンは一発こそ出なかったがセンター前にしぶとくゴロのヒットでプーホルスを迎え入れ、9-10とついに1点差。そしてこのシーズン終盤で神がかった活躍を見せていた7番フリースがレフト前に痛烈なヒットで、二死1、3塁と一打同点の局面で繋いだ。
バッター9月打撃好調の8番ペレス。ペレスはバットを砕かれながらも執念でレフト前へ持っていき、ついに10-10の同点!静まりかえるレンジャース・スタジアム。
そしてとどめは9番ジアボテラ。私が密かにLAAのムネリンと呼んでいた小兵ながら非常にチャンスに強いバッターだ。ジアボテラは期待に応えてセンター前に逆転のタイムリーでついに11-10。二死からまさかの4連打である。
9回裏、レンジャースも2死からアンドルスがヒットで出塁しすかさず盗塁。タイミングは完全にセーフだったが、まさかのオーバーランしてしまい、タッチアウトで試合終了。背水の陣のエンゼルスが9回に4点差をマクって11-10、史上希に見る大逆転勝ちとなった。
試合終了後のテレビスタジオで解説のピート・ローズが「Wow」と書いた紙を出して「35年間野球の試合を見てきたが、こんな凄い試合は見たことがない」とコメントした。負けたら終わりの試合で、こんなものすごい試合が出る所が野球の面白さだ。
翌日のシーズン最終戦、エンゼルスは勝てばワイルドカードのタイブレーク進出の望みがあったが、今度はレンジャースが9-2で勝って優勝を決め、エンゼルスは地区3位でシーズン終了。ポストシーズン進出はならなかった。
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