午後、マドン監督解任のニュースが飛び込んできた。
私の第一印象は「やっぱりか」。なにしろマドン監督の采配については私もフラストレーションが溜まることが多かったので「意外」とか「電撃」とかは思わなかった。その次に思ったのは「大谷のエンゼルス残留交渉に影響を与えるだろうか?」という事だ。大谷の残留については稿を譲るとして、解任に至ったマドン監督の采配振りを振り返ってみたい。
早すぎる先発投手の交代タイミング
何よりも先発投手の交代が早すぎた。そこそこ好投していても5回2死とかで代えてしまう。4月はそれでも救援陣が奮闘して上手く行っていた。しかし早すぎる先発投手の降板は当然ながら救援陣にしわ寄せが行く。酷使を重ねた結果5月半ば以降は勝ちパターンだったはずの救援投手が出れば打たれ逆転負けを重ねた。それでもマドンは自分の方針を変えることをせず、同じパターンを繰り返して12連敗にまでなってしまった。この柔軟性の無さこそがマドン解任の最大の理由だろう。
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エンゼルスはメジャーで唯一6人ローテーションを取るチームだ。一人一人の登板間隔が空く分、他のチームの先発よりは長く投げてもらうのが当然だと思うのだが、マドン采配では5人ローテのチームよりも早く降板させていた印象だ。その理由の1つがマドンが信奉する「先発投手は相手打線と3巡目の対戦になると打たれ出す」というデータだ。そのデータ自体は間違いではないが、先発を3巡目前に代えた方が勝てるかどうかは別問題。エンゼルスのように中継ぎに強力な投手がいないチームは先発を早く代えるのはむしろ逆効果だった。それでもマドンは自分のやり方を変えなかった。
マドンが5回くらいで先発を代えた後、9回まで誰に何イニング投げさせるのかプランがあるようには思えなかった。ピンチとの追いかけっこ、出たとこ勝負で投手を代えていくので最後はコマが足りなくなる。そして回またぎでの登板やランナーを背負っての登板など後続の投手に負荷がかかる場面が続出し、結果として加速度的にブルペンは疲弊していった。
左対左に異様にこだわる
「左打者と左投手の対戦は左投手に有利」は有名なセオリーだが、これに徹底的にこだわったのがマドンだ。攻撃の時は相手が左投手先発ならウォルシュ、マーシュといった左打者を外し、ラガレス、ダフィーといった実力では劣る右打者を先発させた。
また左打者の後には右打者を入れるというジグザク打線を偏愛し、ウォード、レンドーンといった主力の右打者がケガで出られない時も大谷の後にウォルシュを入れることはなくスタッシ、ダフィー、メイフィールドらを入れた。
逆に守りの時は相手に左打者を迎えると、たとえ好投していても右投手から左のループへスイッチという戦法を好んだ。4月はループの調子も良く上手く行っていたが、5月になりループが急激に調子を落として左打者を歩かせたり痛打を浴び続けてもこの左腕スイッチを変えることはなかった。
守備シフトへの対応
最近のメジャーは極端な内野守備シフトが当たり前になった。左打者の場合は三遊間はショートだけで三塁手はほとんどライトの前で守ることも多くなった。エンゼルスの攻撃陣はシフトの逆を突く流し打ちなどを見せることもなく、初球からバンバン振っていく打者が多い。トラウトや大谷ならともかく、下位のレンフィーフォ、ベラスケスらも基本フリースインガーだ。マドンはそれに対して特に注文をつけることもなく自由放任で、ノーヒットでも1点を取るというアストロズのような抜け目のない「打線」を形成できなかった。
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一方で守備の時は相手チームがシフトの逆を突く打撃を見せても対応することなく、力のないゴロで逆方向へのタイムリーヒットを多く浴びた。
不可解な選手起用
フィリーズに逆転サヨナラホームランで敗れた試合、あと一人まで来たイグレシアスをなぜかハーゲットに代えたのが典型だが、理解に苦しむ選手起用が多かった。あそこまで行ったらイグレシアスと心中すべきだ。ハーゲットは最近調子は良かったがあのような場面で投げさせたことはない。未体験の舞台でハーゲットが打たれ、ハーゲット本人はもちろん、あと1死で降板させられたイグレシアスにもプラスがなかった。
そう言えばレンジャース戦で1点負けていて満塁でバッターを敬遠した驚きの采配があったが、4点差でハーパーに満塁ホームランを打たれたシーンこそ強打者ハーパーを敬遠すべきではなかったか?どういう時に満塁敬遠という奇襲戦法を取るのか誰にも理解不能だった。
完全にピークを過ぎているラガレスを獲得しすぐに外野で起用したのも全く合点がいかない。ラガレスは投打にチームの足を引っ張り続けている。未来のないベテランに出場機会を与えるくらいなら誰でも良いから若手を引っ張り上げるべきだ。
成功体験から来る自分の信念に固執して柔軟性を欠いた
セオリーもデータも使い方を間違えれば諸刃の剣である。レイズ、カブスと成功を積み上げてきたマドンはその信奉する戦法から離れることが出来ず、柔軟性を欠いてしまったように見える。結局のところマドンは自分の信じるセオリー、戦法に殉じてしまったのだ。
現代の野球では相手もセオリーやデータは熟知しているし、刻々と姿を変えている。ブルペンが弱いなら先発を引っ張るべきだし、下位打者の打力が弱いならバントや進塁打を多く使うべきだ。相手そして自分に合わせて常にアジャストしていく事こそ勝利を引き寄せるカギである。つまり「敵を知り、己を知り、それに柔軟に対応してこそ、百戦危うからず」なのである。
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ネガな部分だけじゃなくて、
良かった点も知りたいです!
最大の功績は大谷のリアル二刀流を実現させたことでしょう。どれだけファンが興奮したことか。
それ以外にはあまり思いつきませんが、目に見えないところでの選手とのコミュニケーションとかは良かったのかもしれません。
その前のソーシア、オースマスも采配的にはそれほど変わらなかった印象です。
エンゼルスにしては?決断が早かったですね。
お見事な分析です。
かつての名将が時代遅れの老兵になってしまうのは、少し寂しいですが。
しかし、現スタメンは目も当てられないですね。
他球団でもレギュラー張れそうなのは、大谷、ウォルシュくらいでしょうか、マーシュがずいぶんな強打者に見える布陣です。
筆者様も再三指摘されているように、レンヒーフォやアデルのような野球脳がない選手ですが、見ているとベラスケスやウェード、ダフィー、メイフィールド、みんな無いように思えてきました。
マッドンはレンヒーフォ好きでしたが、さて今後はどうなりますか。
スキのない野球をするってそんなに難しいのかと思うくらい、野球IQの低い選手が多いですね。野手はみんなトラウト二世にでもなるつもりなのか振り回して一発打つことしか考えてない選手が多い。
また明らかに守備の意識も低い。ユーティリティとか言って内野も外野も守らせることが多いですが、何でも屋になってしまい結果として各守備位置でのプロ意識みたいなものを奪っている気がします。