モレノ・オーナー、大谷のためにも贅沢税くらい払ってよ!

ワールドシリーズも終わり、いよいよ来週はウインターミーティング、ストーブリーグの本番に突入だ。

エンゼルスにとってはショートや捕手も補強ポイントではあるが、とにかく投手陣の整備がチーム浮上の絶対条件になっている。最低でも頼りになる先発を二人、パワーのある中継ぎも二人必要だ。そしてイグレシアスとの再契約も当然必須である。

ペイロール(総年俸)分析

今年のエンゼルスのペイロールは182ミリオンドル(約205億円)だった。来年は複数年契約を結んでいる選手(トラウト、レンドーン、アップトン、大谷、フレッチャー)で110M、それ以外の選手が20Mの合計130Mは確定している。2021年並の総額とすれば、FA選手の獲得に使える資金は約52Mである。イグレシアスに15M、先発二人に15Mずつ、中継ぎ二人で15Mとなれば60Mとなってもう予算オーバーだ。

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一つの解は若手選手のトレードで費用を抑えることだ。ウォルシュ、マーシュ、アデルら年俸が安いが伸び盛りの野手と、同じく年俸が安いが期待のできる若手投手とのトレードをまとめられれば、あまり資金を使わずに投手力アップができる。しかし当然ながら期待の若手を出す以上攻撃力の低下は避けられない。諸刃の剣である。

贅沢税を払ってでも強化しないのか?

もう一つは贅沢税(ペナルティ)を支払ってでも資金投下することだ。エンゼルスの予算52Mというのはあくまでも贅沢税のかからないペイロール上限までの金額だ。ペナルティを払う気があればもっと資金を出しても良いし、実際エンゼルスにはそれくらいの資金力はある。

ちなみに2021年、MLBで贅沢税を払ったチームはドジャース、フィリーズ、レッドソックスの3チーム。フィリーズとレッドソックスは数十万ドルにすぎず、実質的に払ったのは限度額を43M超過し、17M払ったドジャースだけだ。その17Mをもったいないと取るか、強化には必要と考えるかだ。

また2年続けて上限を超えると、2年目は贅沢税の税率がアップする。それを避けるため2年連続で超過しないように調整するのがGMの腕の見せ所だ。

今年もプーホルス、キンターナなどに散々無駄遣いをしてきたエンゼルス。シャーザーのように本当に実力のある投手を獲得するのに17M追加っていう程度ならどうってことないと思うが、問題は果たしてあの金の亡者、モレノ・オーナーがGoサインを出すかどうかだ。私がモレノを金の亡者と呼ぶ理由は球場とその周辺の土地をアナハイム市から購入したディールにある。

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モレノのエンゼルスタジアム買収劇

これまでエンゼルスはエンゼルスタジアムを所有していたわけではなく、スタジアムを所有するアナハイム市からリースするという形でフランチャイズを維持してきた。

2020年9月、モレノの傘下会社はエンゼルスタジアムと駐車場、500室のアパート、公園を含む約18.3万坪(東京ドームの約13.6倍)の敷地を、アナハイム市から実質150M(165億円)で買収することで合意した。調査会社によると実際の価値は500M(550億円)以上というからモレノにとっては400億円近く儲かったボロ儲けディールだ。


広大なエンゼルスタジアムとその駐車場

なぜこのようなディールが成立したかと言うと、モレノはこれまでスタジアムのリース契約更新時に、アナハイム市に対して球団移転をちらつかせては巨額のスタジアム改修費用の負担を要求するなど揺さぶりをかけてきた。

「球場を建て替えるか大改装しろ。でなきゃオレたちアナハイムから出て行っちゃうよ」

「球場とその回りの土地を売ってくれるんなら、改修は自分たちでやるからお金出さなくてもいいけど」

最終的にアナハイム市は税金で多額の改修費を負担するのは難しいとしてモレノの要求に屈し、言い値で売却せざるを得なかった。メジャーリーグの球団を招致したい自治体はいくらでもあるので端からモレノが圧倒的に有利で結果は見えていた。

モレノが2003年にエンゼルスをディズニーから買収した時の金額は184ミリオン。それが現在の価値は2000ミリオンにまで膨れ上がっている。これほど大儲けしながらさらに球場買収でこれでもかと大儲けだ。

このようにエンゼルス買収で美味しい思いをしながら、年間わずか十数ミリオンの贅沢税すら払いたくないというのはファンとしては釈然としないところだ。ファンのために多少は還元してもいいではないか。モレノはこれまで金は出しても口も出すオーナーとして知られてきたが、もはや金は出さずに口を出すオーナーと言われても仕方ないのではなかろうか。

自腹で2000億円も出してスタジアムを建設するオーナーも

こういうモレノの態度を見るにつけ、比較してしまうのは同じくロサンゼルスを本拠地とするNBAのクリッパーズだ。ケチで有名だったクリッパーズの前オーナーが2014年に選手に対する人種差別発言を愛人に暴露され、選手たちが試合ボイコット寸前になった。事態収拾に動いたコミッショナーがオーナーにチーム売却を命令し、買収に手を上げたのが現オーナーのスティーブ・バルマーだ。バルマーはマイクロソフトの創業時からビル・ゲイツの右腕としてCEOまで登り詰めた世界でも有数の資産家である。バルマー以外にもオブラ・ウインフリー(司会者)、マット・デーモン(俳優)、フロイド・メイウェザー(プロボクサー)、オスカー・デ・ラ・ホーヤ(プロボクサー)など蒼々たるメンバーが買収に名乗りを上げたらしいが、バルマーの資金力はズバ抜けていた。(結果としてバルマーがオーナーになってくれてよかった)

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そしてバルマーが買収代金として支払ったのは何と2000ミリオンドル(2200億円)!買収と同時にバルマーはクリッパーズのオーナー職に専念するためマイクロソフト他全てのビジネスの役職から退いた。現在でもホーム、アウェイを問わずコートの最前列で選手の活躍に一喜一憂する熱い姿を見せている。

しかしクリッパーズもエンゼルスと同様、自前のスタジアムを持たず、ロサンゼルスのダウンタウンにあるステープルズ・センターを借りて本拠地としている。ところがステープルズ・センターは同じくLAを本拠とするレイカーズ、そしてNHLのキングスを優先テナントとして抱えており、クリッパーズは3番手の扱いだった。この3つのチームはシーズンがもろに重なるため、クリッパーズは連戦や昼間の開催などスケジューリングで不利な扱いを受けていた。

このことに我慢がならなかったバルマーは2017年、LA近郊のイングルウッド市に新アリーナを自前で建設することを発表。完成は2024年で建設費用の1800ミリオン(2000億円)はまたしてもバルマーが払うという。どれだけ太っ腹なんだ・・・


クリッパーズの新アリーナ、インテュイット・ドーム完成予想図

ライバルの妨害もなんのその

しかしこの計画に待ったをかけたのが建設予定地の隣接地にザ・フォーラムと呼ばれる古いアリーナを所有するMSG社だった。MSG社はニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンとNBAのニューヨーク・ニックスを所有しており、総帥のジェームス・ドーランは2代目のボンボンで、そのケチで余計な口ばかり出す経営スタイルはニックスファンのみならず選手やOBからも毛嫌いされているのは有名な話だ。昨年ドーランがコロナウイルスに感染したと報じられた時、ニックスファンは大盛り上がりしたと言うからどれだけ嫌われているんだか・・・

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1960年代に建設されたザ・フォーラムは90年代までレイカーズが本拠地としていたが、レイカーズがステープルズ・センターへ移転後は賑わいを失い、老朽化もあって2012年わずか23.5ミリオン(25億円)でMSG社に売却されたのだ。

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ドーランはクリッパーズの新アリーナはザ・フォーラムにとって大打撃としてイングルウッド市とバルマーに訴訟を仕掛けた。しかしこの程度の妨害にひるむバルマーではなかった。バルマーはなんとザ・フォーラムをMSG社から400ミリオン(450億円)で買収することで訴訟を取り下げさせた!格好よすぎるぜ、バルマー!

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ドーランはゴネたおかけで25億円がわずか8年で450億円になったのだからホクホクだろうが、この小物感が何とも言えない。バルマーと比べると同じ大金持ちでも人間のスケールが全く違う。もちろんバルマーはクリッパーズファンにこよなく愛され尊敬されている。

再びファンを振り向かせることが出来るか、モレノの正念場

現在75歳のモレノは何歳まで生きるつもりか知らないが、ここまで膨れ上がった自分の資産を死ぬまでにさらに何百億か上乗せできたとしてそれが何だというのだ?ワールドシリーズを制するという買収当初の意気込みはどこへ行ったのか?つい6~7年前はドアマットだったアストロズにカモにされ続ける今のエンゼルスを見て何とも思わないのか?

大谷がブレークし格安で保有できるあと2年間はエンゼルスにとって大きなチャンスだ。だから20Mくらいの贅沢税などポンと払ってやれよ。さんざんエンゼルスで儲けたのだから多少はファンや地域に還元してもバチは当たるまい。

スティーブ・バルマーのようにファンに愛されて人生の最後を送るのか、ジェームス・ドーランのようにファンに愛想を尽かされるのか分かれ道だ。

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2件のコメント

  1. いつも楽しみに読ませていただいております。

    モレノ氏、まさに金の亡者ですね。そういった亡者には、ファンへの「還元」という発想は持ち合わせていないような気がします。
    贅沢税のような、取られなくてもいい金?は1セントたりとも払いたくないというのが、たぶん世界共通でケチと呼ばれる人間の性ですから。

    さて、気になるのは大谷選手との契約ですが、贅沢税を払わないと仮定すると、先日獲得したシンダーガードは1年契約とのことですが、もし、大谷選手がトラウトと同等の契約を得るとした場合、トラウト、レンドーン、大谷の巨額契約3名と、イグレシアスを筆頭にポストシーズンに行けるような本気の補強との両立が物理的に可能なのでしょうか?
    管理人様の見立てはどうでしょう?
    まだリミットは先ですが……

    勝手な話ですが、個人的にはエンゼルスに残留して、その上でポストシーズン、ワールドシリーズと、そういうストーリーを見たいと思っています。

  2. 贅沢税を払わない前提だと中途半端な補強しかできず、若手投手が二人くらいブレークしないとポストシーズン進出は難しいと思います。贅沢税を払うことも厭わなければかなりいい線行くと思います。オーナー次第ですね。

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