エンゼルス選手紹介 2023年(野手編)

2023年のエンゼルスの野手陣を紹介する。

開幕直前にアップトンをDFA

Embed from Getty Images

開幕直前にあと1年契約が残るアップトンをDFAとした。キャンプでは好調で生き残りのために一塁守備にもチャレンジしていたアップトンをこの時期に戦力外としたのは少々意外だった。エンゼルスは昨年のプーホルスに続き2年続けて契約期間を1年残して主力選手をDFAとした。

スポンサーリンク

5年契約のアップトンは1年目こそまずまずの成績だったが、2、3,4年目は攻守に渡って精彩を欠き、想像以上に衰えが早かった。また一つエンゼルス大失敗の長期契約の実例が積み上がってしまった。

それにしてもエンゼルスはアップトン、レンドーン、フレッチャーとキャリアハイとなる成績を残した選手と複数年契約してほとんど失敗している。プーホルス、ハミルトン、コザートもだ。キャリアハイの成績を残した選手が好条件の複数年契約をゲットするとプレッシャーから解放され、それが悪い方向に行くケースが多いのではないだろうか。そういう意味では契約の有無にかかわらず好成績を残し続けるトラウトは凄い。

ちなみにアップトンはその後マリナーズに拾われたがわずか17試合に出場しただけでリリースされ、34歳にして実質引退に追い込まれた。高い身体能力を誇りプロ入り前から将来を嘱望されて、ドラフト全体1位でメジャー入りした華やかな経歴からすると34歳での引退は早すぎる。

深刻な選手層の薄さが露呈した2022年

2022年はレンドーンの離脱が14連敗のきっかけとなってしまったが、他にもフレッチャー、トラウト、ウォルシュと主力選手が相次いで故障し、やむを得ず代替選手で戦う期間が長期に及んだ。捕手を除いて昨季エンゼルスの内野でプレーした選手は19人にのぼる。ジャイアンツとアスレチックス(それぞれ21人)に次ぐ数字だった。

ところが起用した選手のほとんどは期待に添うどころかメジャーレベルにない選手ばかり。エンゼルス内野陣のOPSは、アスレチックス(.602)、タイガース(.617)に次ぐワースト3位の.629だった。起用する選手が全く奮わないため、とりあえず他球団をDFAされた選手を拾って試してはDFAというループが続き、中にはビヤーのように契約後1ヶ月もたたずにDFAされる選手もいた。その場しのぎというか、選手を見る目がないというか、とにかく長年育成が上手くいっていないツケが一気に噴き出した2022年だった。

大型契約は避け、小粒ながら野手の底上げを図った2022年オフ

今年のオフはジャッジ、コレア、バーランダー、デグローム、ボガーツ、ターナーと空前の大型契約が飛び交ったが、球団売却が既定路線のエンゼルスは新オーナーが決まるまでは将来を左右する大型契約には手を出せなかった。そのためミナシアンは派手さはなくとも堅実な働きが期待できる中堅の選手を探して野手陣の底上げを図った印象だ。

スポンサーリンク

2022年に退団した主な野手(*は契約後1年以下で退団)

  • ブランドン・マーシュ(トレード)
  • マット・ダフィー(FA)*
  • ジャスティン・アップトン(DFA)
  • タイラー・ウェイド(トレード)*
  • ジャック・メイフィールド(FA)
  • ホセ・ロハス(DFA)
  • フィル・ゴセリン(解雇)*
  • ジョナサン・ビヤー(DFA)*
  • カート・スズキ(引退)*
  • デヴィッド・マキノン(DFA)
  • マイク・フォード(FA)*
  • マグネウリス・シエラ(FA)*
  • フアン・ラガレス(DFA)*

今オフに新規加入の主な野手

  • ハンター・レンフロー(外野手、30歳、ブルワーズからトレード)
  • ブランドン・ドルーリー(内野手、30歳、パドレスからFA、2年契約)
  • ジオ・ウルシェラ(内野手、31歳、ツインズからトレード)
  • ブレット・フィリップス(外野手、28歳、オリオールズからFA、1年契約)

管理人の考えるベストオーダー (昨年の打率、本塁打、OPS)

(1)ウォード(右)(.281、23、.833)
(2)大谷(DH)(.273、34、.875)
(3)トラウト(中)(.284、40、.999)
(4)レンドーン(三)(.229、5、.704)
(5)ウォルシュ(一)(.215、15、.642)
(6)レンフロー(左)(.255、29、.807)
(7)ウルシェラ(遊)(.285、13、.767)
(8)ドルーリー(二)(.263、28、813)
(9)オーハッピー(捕)(.286、0、.661)


それでは2023年のエンゼルスの野手陣を紹介しよう。

その他メジャー定着を狙う選手


キャッチャー

マックス・スタッシ(31歳、右投げ右打ち、178cm、背番号33)

正捕手だが打撃、守備とも課題が多く、多くは望めない

Embed from Getty Images

2022年の成績(102試合)

打率 本塁打 打点 OPS 盗塁
.180 9 30 .571 0

2023年は3年契約の3年目(2024年はチームオプション)で年俸700万ドル。

カリフォルニア州出身。兄や叔父がメジャーリーガーで、父親もマイナーでプレーしたという野球一家に生まれる。プロ入りは2009年、アスレチックスからドラフト4巡目(全体123位)で指名された。2013年にアストロズにトレードされると同年メジャー初昇格を果たした。しかし2017年までの5年間は出場機会に恵まれず、わずか49試合、89打席しかプレーさせてもらえなかった。2018年にはブライアン・マッキャン、マーティン・マルドナドらを抑えてようやく出場のチャンスを掴み、88試合で打率 .226、8本塁打を記録した。

エンゼルスへ加入
2019年、エンゼルスは正捕手として獲得したルクロイのキャッチングがあまりにもお粗末で、パスボールのオンパレードに頭を痛めていた。7月、ルクロイが脳震盪で故障者リストに入ったのを機に後釜を探し始め、白羽の矢を立てたのがアストロズのスタッシだった。スタッシは守備力は高いものの、打率は1割台の低空飛行が続いていたが、それには目をつむって獲得した(同時にルクロイは解雇)。スタッシはエンゼルス加入後、守備ではまずまずの貢献を見せたが打撃は酷かった。20試合に出場して42打数3安打、打率 .071、本塁打0本。いくら何でもこの数字は苦しすぎた。

2020年エンゼルスの正捕手に
2020年、短縮シーズンだったがスタッシは打撃面で進歩を見せた。開幕時はジェイソン・カストロの控えだったが、8月末にカストロがトレードで放出されると9月は正捕手に定着。打率も残したが、それまでのキャリア7年で12本塁打だったのが、わずか2ヶ月ほどで7本塁打を放った。この活躍が認められて2021年は正捕手の座を射止めた。2021年は度々のケガもあって出場は87試合に限られたものの打率.241、OPS .752とまずまずの成績を残した。

2022年、攻守に精彩を欠き、捕手不足は深刻化
2022年は正捕手として102試合に出場。打撃面では打率.180、OPS .571とほとんど貢献できず打線の大きな穴の一つになっていた。守備面ではパスボールやワイルドピッチでボールを後ろにそらすことが多かった。盗塁も56回走られて刺したのは12回(阻止率21%)と低迷。キャッチャーの補強はエンゼルスの大きな課題として残ったままである。


ローガン・オーハッピー(22歳、右投げ右打ち、180cm、背番号14)

マーシュを差し出して手に入れた待望の若くて才能のある捕手!

Embed from Getty Images

2022年の成績(5試合)

打率 本塁打 打点 OPS 盗塁
.286 0 2 .661 1

2022年の成績(マイナーリーグ、104試合)

打率 本塁打 打点 OPS 盗塁
.283 26 78 .961 7

2022年8月にブランドン・マーシュとのトレードでフィリーズのマイナーから獲得。フィリーズにはリアルミュートという絶対的な捕手がいるのでオーハッピーにとっても良いトレードだった。

フィリーズのプロスペクトランキング3位
ニューヨーク州出身。高校卒業時の2018年MLBドラフト23巡目(全体677位)でフィリーズから指名されてプロ入りした。指名順位は低いが契約金は21万5千ドルとこの順位の選手としては異例の高額だった。元々大学進学を希望していたこともあって低い順位となったのだろうが、実力は高く評価されていたのだ。

フィリーズのマイナーでは長打力と高い守備力を見せ、フィリーズでのプロスペクト・ランキングも2021年が11位、2022年は3位と確実に評価を上げてきた。2022年にはマイナーの有望選手が参加するオールスター・フューチャーズゲームにも出場した。

マーシュとトレード
7月末のトレードデッドラインで、好打堅守で頭角を現しつつあったブランドン・マーシュとの交換でエンゼルスに移籍した。移籍後は2Aで3番や4番を任され、29試合でホームラン11本、長打率.707と打ちまくった。長打力が注目されるが同時に三振率16.6%、四球率15.7%と堅実性を併せ持ち、強打者にありがちな何でも振り回すタイプではない。エンゼルスのマイナー選手としては唯一メジャートップ100プロスペクトに入っている選手だ。

9月28日、ついにメジャーに初昇格すると早速先発マスクを被り初打席初安打を記録した。

守備能力も高い
オーハッピーは守備の評価も高く、特にキャッチング能力、ブロッキング能力が高い。肩の強さは平均的だが送球モーションの早さと送球の正確性で平均以上の盗塁阻止能力があると言われてる。

また若いながらもリーダーシップに優れ、多くの投手から信頼されている。

長年捕手不足に悩むエンゼルスとしては捕手として極めて高い将来性を持つオーハッピーは何が何でも大成させたい選手である。スタッシのバックアップとして試合に出るところからスタートするだろうが、少々のミスには目をつぶっても使い続けるべきだ。経験が必要と言われる捕手のポジションだからこそ単なるバックアップ捕手としてではなく、多くの試合に出場させることが大事だ。シーズン後半はスタッシから正捕手の座を奪うくらいになって欲しい。ネビン監督は元々捕手でエンゼルスでも捕手としてプレーした経験があるので是非ともオーハッピーを大型捕手として育て上げて欲しい。まだ22歳と若いので成長すればエンゼルスの捕手は10年安泰となるだろう。


内野手

ジャレッド・ウォルシュ(29歳、一塁手、左投げ左打ち、183cm、背番号22)

ケガに泣き成績も大きく低下。復活できるか?

Embed from Getty Images

2022年の成績(118試合)

打率 本塁打 打点 OPS 盗塁
.215 15 44 .642 2

2023年は調停を回避し、1年265万ドルで合意。

超低位指名からメジャーへ
2015年にエンゼルスからドラフト39巡目(全体1185位)で指名される。この年エンゼルスは40巡目まで指名したので下から2番目、つまり入団時はほとんど期待されていなかった。ちなみに1巡目はテイラー・ウォードでフレッチャーが6巡目だった。

当初は一塁も守れるが左の救援投手としても投げられる二刀流選手として注目された。2019年5月にメジャーデビューすると打者としては31試合89打席で打率 .203、1本塁打、OPS .605の成績だった。投手としては5試合に登板して5.0イニング、防御率1.80の数字を残した。

2020年シーズン、7月24日の開幕直後はベンチ入りしたものの全く打てず10日後にはマイナー落ちさせられた。しかし8月28日に再昇格後、チームはプレーオフが絶望となったこともあって先発起用されると急に打ち出した。9月2日から9月17日まで13試合で48打数20安打の打率 .417、7ホーマーと打ちまくって手がつけられなかった。最後は息切れしたが最終的に打率 .293、9本塁打、OPS .971と素晴らしい数字を残しレギュラー獲得への手がかりを掴んだ。

大谷と二人で打線を支えた2021年シーズン
2021年シーズンはプーホルスを押しのけて正一塁手となった。特に前半の活躍はめざましく、6月上旬まで打率3割をキープした。ホームランも大谷に次ぐ29本を打ち、トラウト、レンドーンのいない打線を大谷と二人で引っ張った。大谷が1回7失点でKOされた6月30日のヤンキース戦では9回に難攻不落のクローザー、チャップマンからこの試合2本目となる同点満塁ホームランを放って大谷の負けを消し、劇的な逆転勝ちの立役者となった。

大きく成績を落とした2022年
飛躍した前年を受け、2022年は正1塁手でシーズンをスタートしたが、なかなか成績が上がらなかった。特に左投手に対しては満足な打撃ができなかった(対右投手の打率 .220、対左投手 .200)。

そして8月26日に胸郭出口症候群によりシーズン終了となった。この病気は神経障害と血流障害によって手のしびれや痛みによる握力の低下・肩こりなどを生じる。ウォルシュは9月1日に手術を受け、2023年の開幕には間に合う予定だ。成績の低下はこの病気によるもので回復すれば復活できるのならばいいのだが。

2021年は実力だったのかマグレだったのか真価が問われる2023年
おそらく2023年は相手が左投手の場合は新加入のドルーリーが1塁に起用され、ウォルシュはベンチに回るだろう。しかしウォルシュが復活できるかはエンゼルス浮上の大きなカギを握る。2021年の活躍が実力だったのか、たまたま確変しただけだったのか真価が問われるシーズンになる。


デビッド・フレッチャー(27歳、内野手、右投げ右打ち、175cm、背番号22)

成績低下の過去2年。出塁率アップがカギとなる

Embed from Getty Images

2022年の成績(61試合)

打率 本塁打 打点 OPS 盗塁
.255 2 17 .621 1

2023年は5年契約の3年目で年俸は6M。

出身はエンゼルスのお膝元オレンジ郡オレンジ市。2015年にエンゼルスからドラフト6巡目(全体195位)で指名される。2018年にメジャーデビューした。身体は小さいがファイトあるプレーと勝負強いバッティングでレギュラーを掴んだ。エンゼルスがワールドシリーズを勝った時の名ショート、デビッド・エクスタインを思わせる。

ポジションは二塁が本職だが、ショートを守ることもできる。さらに外野も守れるユーティリティさが売りである。なお特技はルービックキューブで3x3x3を90秒で完成させるという。また母親がイタリア系なので流暢にイタリア語を話せる。

長打力こそないが、チャンスに強いヒットメーカー
デビュー以来3年間の打率は .275(2018年)、.290(2019年)、.319(2020年)と毎年着実にステップアップしてきた。

2019年はダントツでチーム最多の173本のヒットを放った(2位はトラウトの137本)。これはア・リーグ全体でも13位にランクされる数字だ。二塁打30本もチームトップ。出塁率はトラウト(.438)に次ぐチーム2位(.350)で、ホームランこそ少ないが49打点はチーム5位だ。WARもトラウト(8.3)に次ぐチーム2位の3.8を記録した(大谷の2.5よりも高いことは注目に値する)。キャッチャーとファースト以外は全て守れるし、好守で多大な貢献をもたらした。

2020年はチームで唯一3割を打ち、出塁率( .376)もレンドーン( .418)、トラウト( .390)に次ぐ3位で、好成績が認められ2021年からの5年契約をゲットした。

ボール球に手を出して打率も出塁率も低下した2021年
ところが一転2021年は不調に陥り、打率 .262、出塁率も3割を切ってしまい( .297)、キャリア最低の数字に終わった。元々早打ちで四球が少ないが(2021年は20打席に一つ)、何が何でもバットに当てるという意識が先に立って、ボール球に手を出している感があった。

ケガに泣き、さらに成績も低下した2022年
2022年は左臀部の故障のため5月8日から長期離脱し61試合の出場に終わった。打率(.255)、出塁率(.288)ともキャリア最低。元々少ない四球は228打席で7個しか選んでいない。さらに前年15あった盗塁もわずかに1つ。何でも手を出すのではなく、もう少し好球必打のアプローチが必要だろう。このままでは正二塁手としては厳しいと言わざるを得ない。


ジオ・ウルシェラ(31歳、内野手、右投げ右打ち、183cm、背番号10)

ヤンキースで開花した好打好守の三塁手。レンドーンと併用するのか?

Embed from Getty Images

2022年の成績(144試合)

打率 本塁打 打点 OPS 盗塁
.285 13 64 .767 1

2023年は調停権を持っており未定。

ヤンキースで開花した三塁手
コロンビア出身。2008年に17歳でインディアンスと契約してプロ入りした。2015年にメジャー初昇格したが成績は上がらず、2018年5月にDFAを経てブルージェイズへトレードされ、さらに8月にはヤンキースへトレードされた。2019年アンドゥハー(2018年に大谷と新人王争いをした三塁手)の故障でチャンスを掴むと132試合に出場し、規定打席には届かなかったものの打率.314・21本塁打・74打点の好成績を挙げ大きく飛躍した。コロナ禍で60試合の短縮シーズンとなった2020年は43試合に出場し打率.298・6本塁打・30打点と2年連続で好成績をあげた。守備では三塁手のみに専念し1失策で、守備率.992は三塁手としてのシーズン歴代最高記録を更新した。

2022年3月にジョシュ・ドナルドソンの獲得を目指したヤンキースからツインズへトレードされた。ツインズではキャリア最多の144試合に出場し、打率.285、13本塁打、64打点をマークした。

エンゼルスへは11月にトレードで移籍。エンゼルスは19歳のベネズエラ出身右腕アレハンドロ・ヒダルゴ投手(1A)を差し出した。ツインズは後継の三塁手が育っていること、ヒダルゴの奪三振率の高さを買ってトレードに応じたのだろう。

ウルシェラは三塁が本職だが、ショート、一塁も守れる。三塁にはレンドーンがいるので彼が健康ならば必要ないが、ショートか左投手が先発する試合でウォルシュの代わりに一塁を守るという起用をされるのではないだろうか。


ブランドン・ドルーリー(30歳、内野手、右投げ右打ち、188cm、背番号23)

2022年は28本塁打でキャリアハイの成績。特に左投手にはめっぽう強い。

Embed from Getty Images

2022年の成績(144試合)

打率 本塁打 打点 OPS 盗塁
.263 28 87 .813 2

今オフにエンゼルスと2年1700万ドルで契約。今年の年俸は850万ドル。

オレゴン州出身。2010年のMLBドラフト13巡目(全体404位)でアトランタ・ブレーブスから指名されプロ入りした。2013年にトレードでダイヤモンドバックスへ移籍し(この時のトレードパッケージの相手にはあのジャスティン・アップトンが含まれていた)、2015年にメジャー初昇格。その後ヤンキース、ブルージェイズ、メッツとチームを変わったが、2021年オフにメッツをDFAされている。

キャリアハイとなった2022年
2022年はレッズとマイナー契約すると4月にメジャー昇格した。キャリアハイとなる数字を積み重ねるとトレードデッドラインで優勝を狙うパドレスがトレードで獲得した。結局この年はレッズとパドレスで138試合に出場し、キャリアハイとなる28本塁打を記録。フィリーズとのナ・リーグ優勝決定シリーズでは敗れはしたがドルーリーは打率4割を残した。オフにはユーティリティープレーヤーとしてシルバースラッガー賞を受賞した。特に左投手を相手に抜群の数字を誇り、対左腕のOPSは .955を記録している。

2022年オフにエンゼルスと2年1700万ドルで合意。守備位置は三塁と二塁が多いが、一塁も守れ、ショートや外野の経験もある。正二塁手をレンヒーフォ・フレッチャーと争い、ウルシェラ同様に左投手の時にウォルシュの代わりに一塁で起用をされるのではないだろうか。


アンソニー・レンドーン(33歳、三塁手、右投げ右打ち、185cm、背番号6)

エンゼルス入団後はケガ続きでほとんど不良債権、本当に復活できるのか?

Embed from Getty Images

2022年の成績(47試合)

打率 本塁打 打点 OPS 盗塁
.229 5 24 .704 0

2020年から7年総額245ミリオンの契約を結んでいる。オプトアウトは含まれていないので36歳になるシーズンまでエンゼルスでプレーする。2023年の年俸は3857万ドル。トラウト(3711万ドル)よりも高級取りである。

ゲリット・コール争奪戦に敗れて代わりに獲得
2019年オフ、エンゼルスはゲリット・コールの獲得を目論んだが、ヤンキースとの争奪戦に敗れると翌日にはレンドーンと契約した。レンドーンの代理人スコット・ボラスによると、エンゼルスのモレノ・オーナーはそれまでも事あるごとにレンドーンへの興味を伝えていたという。モレノの知人がレンドーンが大学生の頃から絶賛しており、モレノは個人的にレンドーンを獲得したがっていたらしい。コールもレンドーンも代理人はスコット・ボラスで、そんな事情を知るボラスから「コールはヤンキース、レンドーンはエンゼルス」とうまいことハメられた気はする。

結局最大の目標だったエース級の先発投手の補強は叶わなかったが、永年の課題であった三塁手をレンドーンで埋めることができたのは大きな収穫と思われた。何しろ三塁は2009年のチョーン・フィギンスを最後に固定できず、トレードやコンバートもことごとく失敗してきたエンゼルスの鬼門で、2019年もポジション別のOPSでエンゼルスの三塁手はメジャー最低だったのだ。

毎年のように故障しては早々とシーズン終了
レンドーンは2021年は3度のIL入りを経て、8月に右股関節の手術を受け出場はわずか58試合にとどまった。2022年も5月に右手首痛を発症して手術、またしても早々にシーズン終了となり、47試合の出場に終わった。加入後の3年間は384試合中157試合(40%強)しか出場できていない。その間の成績もナショナルズ時代にはほど遠い打率 .252、OPS .779、本塁打20本である。

2023年ケガが完治したとして本当に期待通りの成績を上げられるのだろうか?長期にわたる欠場が響いてアップトンのように早々と衰え始めるのではないかという懸念がよぎる。ミナシアンGMが三塁を守れるウルシェラやドルーリーを獲得したのもそのような懸念を払拭できないからだろう。

レンドーンのこれまで

ナショナルズ時代
テキサス州ヒューストン出身。テキサスの私立ライス大学で4割近い打率と長打力を誇るスラッガーとしてならし、全米大学代表として日本にも来日した。2011年ドラフト1巡目(全体6位)でナショナルズから指名されてプロ入り。

入団から2年もたたない2013年4月にメジャー昇格すると早々と二塁のレギュラーを獲得。98試合に出場して打率.265、OPS.725の成績を残した。その後守備位置は三塁に変わるが順調に成績を伸ばし2017年以降は3年続けて3割をマークしている。

2019年はそれまで主砲のブライス・ハーパーがFAで抜けたため、名実ともにナショナルズの中心打者としてチームを牽引した。チームはナ・リーグ東地区2位ながらワイルドカードでポストシーズン進出を決めた。

大活躍の2019年ポストシーズン
ドジャースから王手をかけられた地区シリーズ第4戦で3打点を挙げ、続く第5戦では逆転勝利につながる本塁打を放った。カージナルス相手のリーグチャンピオンシップでも毎試合安打を放ち、チーム史上初のワールドシリーズ進出に貢献した。

アストロズとのワールドシリーズでは王手をかけられた第6戦でレンドーンは5打点をあげて逆王手をかけた。第7戦は6回まで2点をリードされる苦しい展開だったが、7回にレンドーンのソロとケンドリックの2ランで逆転してそのままワールドシリーズを制した。レンドーンはポストシーズン全体で打率.328、5本塁打、15打点、OPS1.003の大活躍だった。

この年レンドーンはナショナルリーグのMVP投票で3位に入った(1位ベリンジャー、2位イエリッチ)。


ルイス・レンヒーフォ(26歳、二塁手、遊撃手、右投げ左右打ち、178cm、背番号4)

後半に打撃開花!左右両打席でパンチ力あり

Embed from Getty Images

2022年の成績(127試合)

打率 本塁打 打点 OPS 盗塁
.264 17 52 .724 6

2023年は調停権を持ち未だ合意に至らず。このまま調停に持ち込まれる可能性もある。

ベネズエラ出身。2014年にシアトル・マリナーズと契約してプロ入り。その後レイズへトレード。2018年4月、エンゼルスが元ドラ1の一塁手CJ・クロンとの交換で獲得した。クロンはエンゼルスでは余剰戦力気味だったが、それなりに数字を上げていたクロンとの交換ではエンゼルスがだいぶ損した印象だ。

2019年4月にメジャー昇格すると、ラ・ステラ、シモンズ、コザートら内野手の相次ぐ故障もあって90試合に先発出場したが、打撃成績は平均以下だった。

2020年は33試合で90打数14安打( .156)、OPS .469と低迷。スピードはあるがバッティングはまだまだメジャーレベルになかった。2021年の開幕もマイナーで迎え最終的には54試合に出場も、打率.201、6本塁打、OPS .556と伸び悩んだ。

2022年ようやくポジションを掴む
2022年はマイナースタートとなったが、5月にフレッチャーが故障者リストに入ったためにメジャー昇格した。最初は調子が上がらなかったが徐々に打率もあがり、8月以降は長打が出始めて最後の52試合で12本の本塁打を放った。最終的にはキャリアハイとなる打率 .264、OPS .724を記録し、シーズン後にはユーティリティ選手部門でゴールドグラブ賞及びシルバースラッガー賞のファイナリストにも選ばれた。

メジャー最低の四球率
小柄だがスイッチヒッターで左右どちらからも長打が打てるパワーが持ち味。一方で出塁率は .294と3割に届いていない。511打席でわずか17個しか四球を選んでおらず(3.3%)、これは規定打席到達者ではメジャーワーストの数字である。選球眼が悪いと言うよりも、どんな時も初球からフルスイングして深いカウントに行く前に決着が付くバッティングスタイルが原因だろう。同じ事がフレッチャーにも言え、この小柄な二遊間コンビは四球が少なすぎる。いくらパンチ力があるからと言ってトラウトのように本塁打や打点が求められる立場ではない。もう少し出塁率を意識したアプローチが求められる。

好守備の一方でギャンブルプレーも目立つ
守備もファインプレーがある一方で、与えなくてもいい余分な進塁を許すケースがしばしば見られた。例えば間に合わない塁でもボールを取ればとにかく送球するようなイチかバチかのギャンブルプレー。攻守において野球IQの低さが目についた。

ドジャースとのトレード話
レンヒーフォの名前が大きく報じられたのは2020年2月上旬にドジャースとのトレードが浮上した時だ。エンゼルスは36本塁打を放ったピーダーソン外野手に加えて、ドジャースで4番手の先発投手だったストリップリングも獲得するという。それだけでも十分魅力的な話なのだが、その交換相手がなんとレンヒーフォ(あとマイナー選手)というのにビックリした!

OC Register紙:内野はレンドーンで大補強!残るはシモンズ延長問題(2020/2/5)

しかし何をとち狂ったかトレードに時間がかかっている事に腹を立てたオーナーのモレノが、ケツをまくってトレード話から離脱してしまったのだ。こんなに美味しいトレードを蹴ってしまうとは何と愚かなオーナーかとファンを激しく失望させた。

OC Register紙:外野はアップトンの復活とグッドウィン次第(2020/2/10)

一方でドジャースがレンヒーフォにそれほどの価値を見いだしていたことに驚いた。ドジャース側の事情もあろうが、控えの内野手で目立った活躍もしていないレンヒーフォにレギュラー2人を差し出してもいいと考えた理由は何なのか?全くの謎であるがその答えはレンヒーフォ自らが出すしかない。


外野手

マイク・トラウト(31歳、センター、右投げ右打ち、188cm、背番号27)

3度のMVPを誇るメジャー最高選手!ケガさえなければ今でも現役最高!

Embed from Getty Images

2022年の成績(119試合)

打率 本塁打 打点 OPS 盗塁
.284 40 80 .999 1

2019年春に2030年までの契約を結んだ。2022年年俸は3,711万ドル。2030年(38歳のシーズン)まで毎年この金額が保証されている。この契約にはトレード拒否権は含まれているが、途中で選手側から契約解除できる権利(オプトアウト)は含まれておらず、実質エンゼルスとの生涯契約である。

ケガに泣いた2021年
2021年、トラウトはキャリアでも最高のスタートを切ったにもかかわらず5月に右足ふくらはぎを痛めてIL入り。トラウトはオールスターにも選出されていたが、このケガが長引き2021年シーズンは最後までプレーすることはなかった。36試合出場というのはキャリアで最低の数字である。

14連敗中にキャリアワーストの26打数ノーヒット
2022年シーズンは足の負担を考慮してエンゼルスはトラウトを負担の少ないレフトへコンバートすることも検討したが、結局トラウトの希望で引き続きセンターを守ることになった。

エンゼルスは5月後半にレンドーンがケガで離脱し、同時期にトラウトは26打数ノーヒットというキャリアでも最長の不調に陥っていた。トラウトが世界最高のバッターと呼ばれる理由の1つは調子の波が少なく、不調が短いことだったのだが・・・そうしてチームは極端な得点力不足に陥り、球団史上最長の14連敗を喫し、事実上エンゼルスの2022年はここで終わってしまった。

トラウトはその後7月の半ばから肋椎関節の機能障害で5週間欠場した。病状は心配されたが8月に復帰後は打率 .308、OPS 1.056と変わらぬ活躍を見せ、今でも世界最高のバッターの1人であることを証明してくれた。

トラウトのこれまで

ニュージャージー州出身。2009年ドラフトでエンゼルスが1巡目(全体25位)で指名した。2011年7月にメジャーデビュー。その年は40試合で打率.220、5本塁打と結果を残せなかった。しかし翌年4月ボビー・アブレイユを解雇したエンゼルスはトラウトを再昇格させた。主に1番打者で起用されるといきなり打ちまくって最終的に打率.326、30本塁打、83打点、OPS .963、49盗塁と新人離れした成績を残した。満票で新人王になりMVP投票でも三冠王のミゲル・カブレラの次点となった。それ以降、毎年のようにWARではリーグトップの数値を叩き出しMVP級の活躍を続けた。

3度目のMVP受賞
2019年はキャリアハイとなる45本塁打を放つなど変わらぬ活躍を見せ、2014年、2016年に続き3度目のア・リーグMVPを受賞した。投票結果は1位トラウト、2位ブレグマン(アストロズ)、3位セミエン(アスレチックス)だった(西地区ばかりだ)。9年連続でMVP投票の5位以内に入ったのは凄いとしか言いようがない。3度のMVPに加えてこれまで2位も4回あるのだ。

プレースタイル
トラウトのすごさは高いレベルでの安定感だ。彼の辞書には不振や不調という言葉がないかのように毎年、毎月安定した数字を残している。その基本にあるのは球をギリギリまで引きつけて、コンパクトなスイングでボールを叩けることだろう。特に低めのボールには滅法強く、低めのボールを決め球にする投手には辛い相手だ。

ただ主要打撃3部門のタイトルにはあまり恵まれず、2014年に打点王を獲得したことがあるだけだ。あと2012年には49盗塁で盗塁王となった。しかしリードオフマンから次第に主軸としてのバッティングを期待されるようになってから盗塁は漸減し、2022年はついに1盗塁に終わった。

守備に関しても俊足を活かした広い守備範囲を誇り、たびたびフェンス際でホームランボールをジャンピングキャッチする。唯一の弱点が肩の強さが平均並みなことと言われている。しかし2019年7月23日のドジャース戦でセンターからバックホームした送球は時速158kmを記録し、決して肩が弱いわけではないことを証明して見せた。

5年で4回目の故障者リスト入り
2017年にトレードマークのヘッドスライディングの際、左手親指の靭帯を断裂し約1ヶ月半の自身初の故障者リスト入りを経験した。2018年は8月に右手首の故障で2度目のDL入り。2019年9月には右足に神経腫である「モートン病」を発症、その除去手術を受けてシーズン終了となり、MVPは取ったが134試合の出場にとどまった。そして2021年は右足ふくらはぎの故障で36試合の出場、2022年は7月に肋椎関節の機能障害で5週間欠場した。2016年以前はほぼ全試合に出場し続けてきただけに最近ケガが増えてきたことは気になる。

2020年はコロナ禍で60試合の短縮シーズンだった。162試合換算だと46本のホームランを打ち、MVP投票でも5位に入った。しかし打率 .281はメジャーに定着した2012年以来で最も低い。ちなみにMVP投票5位というのも実は一番悪い。これまでの最悪は2017年の4位でそれ以外の年は1位か2位しか取ったことがない。一方で46打点は162試合換算だと124打点に相当する数字でこれはキャリアハイである(過去最高は2014年の111打点)。

プレーオフの経験はわずか3試合のみ
これほど最高の選手ながらプレーオフでプレーしたのは2014年のみ。その年も一回戦でロイヤルズに3連敗して終了。自身も3試合で打率 087と不振にあえいで終わってしまった。その後もチームは長らく安定した勝率を残せていない。そのためエンゼルスはトラウトのプライム(絶頂期)を浪費しているとの批判が絶えない。果たして今年はプレーオフでトラウトを見られるだろうか?

ブライス・ハーパーを遥かに超える成績
トラウトは同世代のスーパースターであるブライス・ハーパーとよく比較されるが、成績的にはトラウトが圧倒している。デビュー以降の主要な数字を比較するとほとんどの数字でトラウトの圧勝だ。

試合 打率 本塁打 打点 四球 三振 盗塁 出塁率 OPS
トラウト(9年) 1199 .305 285 752 803 1118 200 .419 1.000
ハーパー(8年) 1084 .276 219 635 684 1012 90 .385 .897

トラウトは性格も真面目で謙虚。高校時代からのガールフレンドと2017年に結婚した。ビッグマウスで悪童のイメージが強いハーパーとはここでも対象的である。

ちなみにプライベートでは無類の気象マニアとして知られている。嵐が起きると追っかけている。キャンプ地のアリゾナ州近郊に雪嵐が接近中と知った際には、休日だったために2時間半かけて車を運転し、一日中吹雪を眺めていたという。また彼のスマホには世界の気象情報を網羅する複数のアプリがインストールされており、同僚らも試合が雨天中止か微妙なときは、真っ先にトラウトに尋ねるらしい。


テイラー・ウォード(29歳、外野手、右投げ右打ち、185cm、背番号3)

スポンサーリンク

ついに才能が開花したドラフト1位!

Embed from Getty Images

2022年の成績

打率 本塁打 打点 OPS 盗塁
.281 23 65 .833 5

2023年は調停を回避し、1年275万ドルで合意。

オハイオ州出身。2012年にレイズから指名を受けるもプロ入りせずに大学進学、2015年エンゼルスがドラフト1巡目(全体26位)で指名してプロ入り。契約時は捕手としての指名だったが、2018年に三塁手にコンバート、さらに2019年は外野手も兼任するようになった。

メジャー昇格は2018年。2021年はマイナーで開幕したが、プーホルスの退団、レンドーンやトラウトのケガなどで外野での出場機会が回って来た。最終的に65試合に出場して、打率 .250、8本塁打、OPS .769とまずまずの成績を残した。一方で外野、内野、そして時には捕手として守備につくこともあったが、いずれも未熟さが目立った。

大爆発した2022年4月
2022年のスプリングトレーニングでは14試合に出場して、打率 .306、3本塁打、OPS .970と打撃面では素晴らしい成績を残したが、開幕直前に股関節痛で離脱し、復帰は9試合目からとなった。しかしここからウォードの快進撃が始まり、フェンスに激突して再び離脱する5月20日までの1ヶ月間(30試合)で、打率 .370、9本塁打、OPS 1.194とメジャー打撃成績のトップだった。

その後夏場になると成績を落とし、6-7-8月の3ヶ月間(69試合)で打率 219、8本塁打、OPS .629と平凡な成績に落ちこんでしまった。しかし9月になり最後の30試合は再び打率 .345、6本塁打、OPS .972と打棒を取り戻した。

ケガの多さがウォードの弱点だが、健康であれば打撃タイトルを狙えるだけの実力を持つ。外野守備もさらにステップアップして2023年はトラウトに続く若手リーダーになって欲しい。


ハンター・レンフロー(31歳、外野手、右投げ右打ち、185cm、背番号12)

メジャー7年で157本塁打。パワーが持ち味の強打の外野手

Embed from Getty Images

2022年の成績(ブルワーズ、125試合)

打率 本塁打 打点 OPS 盗塁
.255 29 72  .807 1

2023年は調停権を持ち年俸は未だ合意に至らず。このまま調停に持ち込まれる可能性もある。

2013年ドラフト1巡目指名の強打の外野手
ミシシッピ州出身。2010年のMLBドラフト31巡目(全体953位)でレッドソックスから指名されたが契約せずにミシシッピ州立大学へ進学した。大学の4年間で名を上げたレンフローは2013年のドラフトでは1巡目(全体13位)と大きく順位を上げてパドレスから指名されプロ入りした。2016年にメジャー昇格すると2017年には定位置獲得、2018年にはキャリアハイの33本塁打を放った。

4年連続でトレードを経験
しかし2020年にトレードされたレイズでは打率 .156、8本塁打、OPS .645と大不振に陥り、オフにノンテンダーFAとなっている。その後レッドソックス、ブルワーズでプレーした後、2022年オフにエンゼルスへトレードされた。エンゼルスからはジェイソン・ジャンク、エルビス・ペゲーロとマイナー選手1人が送られた。ブルワーズは外野に有望株が揃っている状況に加え、年俸調停での年俸増額を嫌って放出したようだ。

パワーはあるが確実性に欠けるバッティング
過去2年はレッドソックスで31本、ブルワーズで29本の本塁打を放っている。メジャー7年間通算で打率 .240、157本塁打、OPS .790を記録しており、パワーはあるが確実性にはやや欠けるバッターだ。守備は強肩で平均以上の守備力を持っている。

昨年エンゼルスのレフトで起用された選手はアデルを筆頭に攻守で実力不足が露呈したので、レンフローの獲得は良い補強と言える。31歳という年齢からして、エンゼルスではせいぜい2-3年しかプレーしないだろうが、その間に若手のモニアックらの成長を促す戦略だろう。


大谷翔平(28歳、投手&DH、右投げ左打ち、193cm、背番号17)

別項掲載予定


その他メジャー定着を狙う選手

2018年以降、若手選手を何人もメジャーデビューさせたが、多くは打撃面で苦労しておりインパクトのある成績を残せていない。正直なところトラウト以降オールスターレベルにまで育った若手はウォルシュくらいである。育成が悪いのかスカウティングがおかしいのか、貧弱なファームはエンゼルスの長年の課題だ。また他チームから移籍してきたベテラン崖っぷち組もメジャー定着、レギュラー奪取を虎視眈々と狙っている。

ジョー・アデル(23歳、ライト、右投げ右打ち、190cm、背番号7)

攻守に未熟さを露呈。トレードの噂も根強い

Embed from Getty Images

2022年の成績(88試合)

打率 本塁打 打点 OPS 盗塁
.224 8 27 .637 4

2023年はメジャー最低年俸(70万ドル)での契約。

2019年まではメジャーでも最高のプロスペクトと評価
ノース・カロライナ州出身。2017年エンゼルスがドラフト1巡目(全体10位)で指名してプロ入り。身体能力が同僚のブランドン・マーシュとともにマイナーで最高と言われており、「ミート力」「長打力」「走力」「守備力」「送球力」の5つの能力すべてが優れているという「5ツール・プレーヤー」との評判を取っていた。高校時代はピッチャーとして150キロ代後半の速球を投げていたという。父親はNFLからドラフト指名されたこともあるアメフト選手で、父親譲りの俊足も見物(みもの)である。2018年MLBのプロスペクト・ランキングでも全体5位に入るほどの超有望株で2019年秋にプレミア12大会のアメリカチームの一員として来日し、日本のファンにも強い印象を残した。

メジャーの壁に跳ね返され続ける3年
2020年はコロナ禍でマイナーリーグは全て中止になってしまった。まだ3年目で未熟さの残るアデルには試合経験が必要と判断したエンゼルスは時期尚早ではあったが8月3日にメジャーデビューさせた。結局ほぼ先発で38試合に出場したものの、124打数20安打(.161)と大きく低迷しメジャーの厚い壁に跳ね返された。2021年は主にマイナーでプレーしたが、メジャーでも35試合に出場し、打率.246、4本塁打、OPS .703と成績は改善の傾向を見せた。

2022年のスプリングトレーニング。アデルは15試合で打率 .308、3本塁打、OPS .974と大活躍し、大いに期待されたが、結果は失望で終わった。打率は低迷し、何よりも空振りが多く、四球も選べない。選球眼に大きな問題を残した。

守備では類い希な身体能力を持て余し気味で、クッションボールを追いかけ過ぎて後逸するなどネタにされるほど凡プレー、珍プレーを重ねた。身体能力に頼ってプレーしてきたためか、全体的に野球IQの低さを感じた。これはエンゼルスの育成システムにも大きな原因があると思われる。

現在アデルのトレードバリューは大きく落ち込んでいるが、もしトレードされずに開幕を迎えたとしても第4か第5の外野手としてベンチ待機かマイナー落ちが予想される。そこから巻き返せるか、それとも素質だけの選手としてフェードアウトするのか正念場である。


ブレット・フィリップス(28歳、外野手、右投げ左打ち、183cm、背番号8)

守備がいいが打撃はあまりに貧弱。なぜ獲得したのかわからない

Embed from Getty Images

2022年の成績(レイズとオリオールズ、83試合)

打率 本塁打 打点 OPS 盗塁
.144 5 15 .466 7

2023年は1年120万ドルで契約。

守備良し、打撃貧弱、ムードメーカー
フロリダ州出身。2012年のMLBドラフト6巡目(全体189位)でアストロズから指名されてプロ入り。その後トレードでブルワーズ、ロイヤルズ、レイズと移籍したが、2022年は成績不振により8月にDFA、その後オリオールズへトレードされた。レイズでは2020年のドジャースとのワールドシリーズ第4戦で逆転サヨナラ打を放ち脚光を浴びた。また明るいキャラクターでチームのムードメーカーである。ちなみにかつて日ハム、ロイヤルズの監督を務めたトレイ・ヒルマンは義理の父に当たる。

選球眼がよくボール球に手を出さない優れた一番打者タイプである。しかし7年間のキャリアで通算打率 は.188、OPS .620しかなく、加えて空振りが多く三振率は40%前後もある。もはやバッティングは期待できるレベルにない。

ちなみに2022年5月10日のレイズ対エンゼルス戦では大量リードされた終盤にフィリップスが登板。トラウトに2ランを許した後、今度は左打席に立ったレンドーンにまさかのホームランを喫した。私はこの試合を球場で見ていたが「あれ、レンドーンが左打席に立ってない?」と気づくやいなやホームランを打ったのにはビックリした。

一方で守備は非常に良い。また俊足で盗塁も多い。エンゼルスの外野はほぼ確定しているので基本的には代走・守備固め要員だろう。それにしても代走や守備固めのためにエンゼルスが120万ドルも投じる理由がよくわからない。仮に外野のレギュラーが離脱したとしても貧弱打棒のフィリップスよりもモニアックやアデルを試した方がいいだろうに。


アンドリュー・ベラスケス(28歳、ショート、右投げ両打ち、177cm、背番号4)

守備は一級品だが打撃は粗すぎて打線の穴に。野球脳の低さも気になる

Embed from Getty Images

2022年の成績(125試合)

打率 本塁打 打点 OPS 盗塁
.196 9 28 .540 17

2023年はメジャー最低年俸での契約。

ニューヨーク州出身。2012年のMLBドラフト7巡目(全体243位)でダイヤモンドバックスから指名されてプロ入りした。メジャーデビューは2018年。その後インディアンス、オリオールズ、ヤンキースに拾われるも毎年DFAされている。2021年11月にヤンキースからDFAされた後、エンゼルスが獲得した。

2022年、守備を買われてメジャー定着
マイナーで開幕を迎えたが、4月にフレッチャーが怪我で離脱したためメジャー昇格、エンゼルスでのデビューを果たした。守備面での貢献が評価されたため、フレッチャーの復帰後もメジャーに残り遊撃手として出場を続けた。

ほとんど9番打者としての出場だったが、出塁率さえ.240しかなく、バッティングでは全く貢献できず自動アウトマシンに成り果てていた。出塁できないなら待球して粘るなど工夫すればいいものの、浅いカウントからブンブン振り回すスタイルを変えることは出来なかった。

9月に右膝半月板断裂により離脱しそのままシーズンを終えた。この年は結果的にキャリアハイとなる125試合に出場した(それまでの最高は2020年の40試合)。

あまりに酷いバッティングはマイナー未満
プロ入り以来の課題は常にバッティングで、メジャー5年間の通算打率は .192、OPS .535と打てなさすぎる。スイッチヒッターで小柄な身体に似合わずブンブン振り回すフリースインガー。スイングスピードは速くパワーはあるので当たればホームランになるが滅多に当たらない。

それでも生き残ってこられたのはショートの守備が素晴らしいからだ。俊敏で強肩、多くのハイライトプレーを見せてくれた。

管理人もあきれた無意味な盗塁(2022年7月14日)
7月14日のアストロズ戦、同点の8回裏二死一塁で、打線で唯一当たっている大谷の長打が欲しい場面。ベラスケスは一塁走者の代走に送られるとすぐさま盗塁を敢行。一塁が空いた大谷は当然敬遠で後の打者が三振で無得点。ここでの盗塁は失敗したら最悪、成功しても大谷は敬遠。どちらにしても相手が喜ぶプレーのベラスケスにはあきれてしまった。自分の足をアピールすることしか考えていなかったようにしか見えない。アデルもベラスケスも、高い身体能力に任せたプレーを続けてきたために頭を使って野球をする習慣がないようだ。身体能力の高い選手ほどそれを有効に使う方法をマイナーで教え込む必要があるのだが、それができていないのがエンゼルスなのだ。

とにかく打席でのアプローチや戦術眼などプレースタイルを変革しないとこのままではメジャーでプレーするのは難しいだろう。


ミッキー・モニアック(24歳、外野手、右投げ左打ち、188cm、背番号16)

2016年全体ドラ1の超エリート。パワーが持ち味の外野手

Embed from Getty Images

2022年の成績(フィリーズとエンゼルス、37試合)

打率 本塁打 打点 OPS 盗塁
.170 4 11 .509 1

2023年はメジャー最低年俸での契約。

高卒で全体ドラフト1位の超有望株
カリフォルニア州サンディエゴ近郊のエンシニタス市出身。高校卒業時の2016年のMLBドラフト1巡目(全体1位)でフィリーズから指名されプロ入りした超エリートである。

しかしその後6年間、メジャーでもマイナーでも成績はふるわず、フィリーズのプロスペクトランキングでも2017年2位、2018年5位、2019年9位、2020年12位、2021年16位と徐々に評価を落としていた。

そして2022年8月2日にシンダーガードとのトレードでエンゼルスに移籍した。フィリーズも見切りをつけて放出したのだろう。

移籍後すぐに2本塁打もケガで離脱し大泣き
移籍後2試合目となる8月4日のアスレチックス戦で先発出場のチャンスを掴むと本塁打を放ったが、8月6日のマリナーズ戦でバントを試みた際に左手の中指にボールを当てて骨折。ようやく掴んだチャンスをケガで失って人目もはばからず悔し涙を流した。しかしまだ24歳と若く、エンゼルスの最初の5試合で2本塁打を打ったことから期待は高い。

2023年は外野控えとしてメジャーに残るか、マイナーで出場しながらチャンスを待つかだろう。エンゼルスの育成力の弱さが気になるが、モニアックが成長できれば大きな戦力になる。


マット・タイス(27歳、内野手、右投げ左打ち、183cm、背番号23)

二転三転の守備位置。エンゼルスのちぐはぐな育成計画の犠牲者か

Embed from Getty Images

2022年の成績(29試合)

打率 本塁打 打点 OPS 盗塁
.217 2 8 .640 1

2023年はメジャー最低年俸での契約。

エンゼルスのドラフト1位
2013年にレッドソックスが32巡目で指名したがそれを断って大学に進学。その後2016年ドラフト1巡目(全体16位)でエンゼルスが指名。2019年メジャー昇格し53試合で8本塁打を放ってなかなかの長打力を見せたが、打率( .211)は今ひとつだった。2020年は出場8試合にとどまり足踏み状態が続いた。2021年も開幕はマイナーで迎え、結局メジャーではわずか3試合、8打席の出場で終わった。

捕手から一塁手へコンバート
元々アマチュア時代は捕手だったが、プロ入り後は打撃を活かすために一塁手にコンバートされた。しかしせっかく良い素材の捕手を指名したのになぜ一塁にコンバートしてしまうのか理解できない。まして当時の一塁はプーホルスがいるので簡単にレギュラーになれないのはわかっている。同じ事がやはりアマチュア時代に捕手だったテイラー・ウォードにも言える。

2021年再び捕手へコンバート
その後マイナーチームの事情から2021年に再び捕手へコンバート。2022年は終盤にメジャー昇格し、捕手として14試合、一塁手として11試合に出場した。

結局タイスは期待の打撃でも芽が出ておらず、マイナーとメジャーを行ったり来たり。ポジションも捕手としてやるのか一塁手としてやるのか未だにハッキリしない。

もし最初から捕手としてキチンと育てていれば今頃はスタッシのバックアップとしてそれなりの出場機会を得ていたはず。そうなっていれば引退を控えたカート・スズキと再契約したり、トレードでオーハッピーを獲得することもなかった。

選手は出場機会が欲しいから捕手をやれ、一塁をやれと言われればその通りにせざるを得ない。チームの方針、特に長期的な展望がグダグダだからタイスのように便利屋的に使われて一向に芽が出ない選手が出てくるのだ。エンゼルスの選手育成策が一貫しておらずチグハグなのを実感する。


マイケル・ステファニック(26歳、内野手、右投げ右打ち、178cm、背番号38)

ドラフト外からの苦労人。「守備の下手なフレッチャー」?

Embed from Getty Images

2022年の成績(25試合)

打率 本塁打 打点 OPS 盗塁
.197 0 0 .509 0

2023年はメジャー最低年俸での契約。

ドラフト指名されず自ら売り込み
アイダホ州出身。大学通算で打率.383を記録するなどメジャーも注目するアマチュア選手だったが結果的に2018年のドラフトでは指名されなかった。失意の中、ダメ元で自分のプレーの動画をメジャー全球団の関係者200人以上に送ったところ、エンゼルスが関心を持ち契約に至った。一度は野球人生をあきらめて弁護士秘書の求人面接を終えたところで、エンゼルスから契約の電話が入り大感激したという。

マイナーではシュアなバッティングを披露
2019年から4年間のマイナーでは通算打率 .313、OPS .827と好成績を上げている。三振率も11.0%と低くコンタクトの上手いバッターである。一方で守備には問題を抱えている。肩が弱く、ショート、サード、セカンドとどのポジションでも平均以下との評価だ。

メジャーでは壁に当たる
2022年6月2日、タイラー・ウェイドがDFAされて待望のメジャー初昇格。即アストロズ戦に6番・二塁手でスタメン出場した。しかしなかなかヒットが出ず26打席連続ノーヒットで7月28日には再びマイナーに降格した。9月にベラスケスが故障して再びメジャー昇格するとついにメジャー初ヒットを記録した。

ファンの間では「守備の下手なフレッチャー」と呼ばれることもあり、体格もプレースタイルもフレッチャーに似ている。今後メジャーに定着するには攻守両面でのステップアップが必要だ。


リヴァン・ソト(22歳、内野手、右投げ左打ち、183cm、背番号13)

シーズン終盤に彗星のように現れて突如ブレーク

Embed from Getty Images

2022年の成績(18試合)

打率 本塁打 打点 OPS 盗塁
.400 1 9 .996 1

2023年はメジャー最低年俸での契約。

ブレーブスのルール違反でとばっちり。エンゼルスへ入団
ベネズエラ出身。ソトはもともと2016年に国際FA選手としてブレーブスと契約してプロ入りした。しかし1年後にブレーブスの長年の国際FAでのルール違反が発覚して13選手の契約が破棄され、ソトも退団を余儀なくされた。その後2017年オフにエンゼルスと契約した。

エンゼルスのマイナーでは打撃に苦労し、打率2割前後を行ったり来たりが続いた。2022年2Aで改善を見せ119試合に出場、打率.281、6本塁打、57打点、18盗塁、出塁率.379を記録した。9月17日にフレッチャーが離脱すると2Aから飛び級でメジャー初昇格を勝ち取った。

突如現れたヒットマシーンにファン狂喜
9月18日のマリナーズ戦ではショートで初スタメン、本塁打を含む2安打2打点を挙げて勝利に貢献した。その後18試合と少ないが、55打数22安打の打率 .400、1本塁打、OPS .996を記録した。それまで自動アウトマシン・ベラスケスの酷いバッティングを見慣れていたエンゼルスファンは「良い選手がいるじゃないか!なぜ使わなかったんだ!?」と狂喜した。

ソトは守備面での評価が高く、ショートとして名手シモンズを思わせる軽快なフットワークと強肩を誇っている。9月に素晴らしいバッティングを見せたが打撃の評価はまだ固まっていない。今後レギュラーを獲得するには打撃面の一層のステップアップが求められるだろう。

スポンサーリンク