チーム紹介 2021年(監督、GM、オーナー)

チーム紹介 2021年(監督、オーナー、GM)

エンゼルスはこの3年間、マイク・ソーシア、ブラッド・オースマス、ジョー・マドンと3人の監督で戦った。いずれも負け越しシーズンで終わっており、チームの長期低迷から抜け出せていない。マドンの場合はコロナ禍でシーズンが60試合に短縮されたので、今年が本当の意味での勝負の年になる。

一方、エリートとの呼び声も高かったビリー・エプラーGMは就任後5年連続で5割以下の成績しか残せず(就任後のトータルは332勝376敗、勝率.469)、契約を1年残して解任された。

代わりに就任したのが元ブレーブスのアシスタントGMだったペリー・ミナシアンだ。ブレーブス時代は2016年に90敗したチームを1年で90勝チームに変え、2018年には地区優勝にまで押し上げた。今季はあまり大物の補強には動かず、地味目の補強にとどまったがそれでもキメ細かく選手を動かして戦力の底上げを図っている。

スポンサーリンク

一方でオーナーであるアルトゥロ・モレノは2003年に球団をディズニーから買収した当時は熱心でファン思いだと非常に好意的に受け止められていた。しかしモレノはしばしば現場に介入し独善的な補強を要求した。結果としてそれがチームの弱体化と長期低落から脱出できない原因になっている。買収時56歳だったモレノもすでに70歳を超え、昨今は独裁的な傾向に拍車がかかっている。ファンもこの頑迷な老人に愛想を尽かしているかもしれない。


ジョー・マドン(67歳)

魔術師の異名を取る名将!2年目は勝負の年に!

Embed from Getty Images

エンゼルスのベンチコーチからレイズ、カブスを指揮して名監督に
ペンシルバニア州出身。大学卒業後はエンゼルスのマイナーの捕手だったがメジャーに昇格することなく引退。その後、エンゼルスのスカウト、打撃コーチ、マイナーリーグの監督などを経て、1996年から2005年までエンゼルスのベンチコーチを務めた。1996年と1999年には代理で監督を数試合務めている。2002年にはマイク・ソーシア監督の下でワールドシリーズ制覇に貢献した。

マドンが監督として頭角を現すのは2006年にタンパベイ・デビルレイズ(現在のタンパベイ・レイズ)の監督に就任してからである。当時のデビルレイズは現在のエンゼルスと同じように投手が壊滅的な状態で、毎年最下位争いをしていた。しかしマドンは監督就任3年目には見違えるほどに投手陣を建て直し接戦にも強くなった。チームはそのまま球団創設初の地区優勝を成し遂げ、勢いに乗ってワールドシリーズに進出(「レイズ旋風」と呼ばれた)。ワールドシリーズではフィリーズに敗れたものの、前年まで2年連続最下位のチームをワールドシリーズまで導いたマドンは絶賛されアメリカンリーグ最優秀監督となった。

2015年からはその手腕を買われシカゴ・カブスの監督に就任。就任2年目の2016年はカブスを108年ぶりのワールドシリーズ制覇に導き、いわゆる「ヤギの呪い」を解くことに成功した。

15年以上にわたる監督生活で1252勝、1068敗、勝率.540を誇っている。

スポンサーリンク

選手育成にも長ける
マドンは選手の育成にも定評がある。レイズは本拠地タンパベイがスモールマーケットのため有力FA選手を勧誘することが難しく伝統的に選手を育成することに長けている。昨年のチーム総年俸は約69ミリオンで、これはエンゼルスよりも100ミリオン近く少ないが、それでも自前で育成した選手を中心にプレーオフに進出している。若手の育成がほとんど進まないエンゼルスにそのノウハウを是非とも注入して欲しいものだ。

魔術師と呼ばれる常識にとらわれない多彩な戦略
マドンは一見奇襲と思えるようなあっと驚く戦法を採ることで知られ魔術師と呼ばれる。例えば投手の打順を8番にするというのもマドンが先鞭を付けた。外野手を4人にするシフトを考えたのもマドン。また投手に一旦外野を守らせ、その後またマウンドに上げるという日本の高校野球のような戦法を取ったこともある。

2017年のカブスでは1年間で打順を143回も入れ替えたがリーグで2位の得点を挙げた。マドンは「私がクレイジーなことをするときは、いままでの経験や数字に基づいている」 と語っている。単なる思いつきでやっているのではなく、それなりの裏付けや自信があってのことだと言いたいのだろう。

二刀流大谷をどう使う?
マドンは1990年代にエンゼルスで働いていた時すでに二刀流というコンセプトに興味を持っていたという。打って投げられるという大谷の特異な才能はマドンの想像力を大きく刺激しているようだ。

2021年のオープン戦では大谷登板時に同時に打席にも立たせる(リアル二刀流)ことを2度試した。しかも打順は1番と2番だった。エンゼルスにとって大谷の投打の実力はともに捨てがたい。レギュラーシーズンでどのくらいの頻度になるかは未知数だが、機会を見てはリアル二刀流で大谷を起用する時があるだろう。

スポンサーリンク


ペリー・ミナシアン(41歳) (GM/ゼネラル・マネジャー)

育成に定評のあるスカウト出身の新GM!ファームが枯渇して久しいエンゼルスを立て直せるか?

トニー・リーギンス(注*)、ジェリー・ディポト(注**)、ビリー・エプラーの後を受けて新GMに就任。この10年で3度目のGM交代である。

ミナシアンはテキサス州ダラスの出身。父親がテキサス・レンジャースのクラブハウス・マネジャーだったので、高校生のころから父親の補助としてレンジャースのベンチに出入りしていた。大学卒業後はレンジャースのスカウト兼コーチング・アシスタントとなりバック・ショワルター監督に仕えた。

29歳からトロント・ブルージェイズのスカウトとして9年働いた。ブルージェイズが2015年、2016年とア・リーグ優勝決定シリーズに駒を進めた時のプロフェッショナル・スカウティング部門の責任者がミナシアンだった。ミナシアンのもっともよく知られているスカウティングの功績はブルージェイズ時代に当時は無名だったノア・シンダーガードを1巡目指名したことだ。

2018-2020年まではブレーブスのアシスタントGM兼スカウトとして過ごした。ブレーブス時代のミナシアンは補強策に貢献して、2017年に90敗したチームを2018年には90勝チームに変え、地区優勝に押し上げた。ミナシアンのいた3年間ブレーブスは全て地区優勝した。

優勝と育成、大きな課題
エンゼルスの大きな問題は、2000年代はメジャーでもトップクラスの質を誇ったマイナー組織が、この10年の度重なる大型トレードにより完全に枯渇してしまったことだ。特に投手の育成は全くと言っていいほど上手く行っておらず、2008年にデビューしたジェレッド・ウィーバー以来、ただの1人もエース級を育成できていない。ミナシアンGMにはレイズやパドレスのように生え抜きの選手育成が上手な球団を見習ってファームシステムの再構築を行って欲しい。

失敗の多い補強策
エプラー前GM時代、補強策はお世辞にも上手くいったとはいえなかった。むしろ失敗の方が多かった。例えば投手はノラスコ、チャベス、ケーヒル、ハーヴィー、アレン、野手はコザート、ルクロイ、アップトン。全盛期はちょっと過ぎてるんじゃないの?と思われるベテランと契約してはやっぱり裏切られるというのの繰り返しである。逆に成功した補強はシモンズ、ラ・ステラ、レンドーン、バンディくらいだろう。ミナシアンが今後どのような補強でチームの強化を図っていくのか楽しみである。

(注*)トニー・リーギンスはエンゼルスのチケットセールスのインターンからGMにまで駆け上がった優秀な黒人だった。メジャーで初の黒人GMということで注目されたが、実質はオーナーのアルトゥロ・モレノのイエスマンに過ぎず、オーナーの鶴の一声で獲得したバーノン・ウェルズの不振の責任を取らされた形で解任された。

 

(注**)ディポトは就任1年目のシーズン中に、チームの打撃不振の責任を負わせる形で、ソーシアの永年の盟友だった打撃コーチ、ミッキー・ハッチャーを独断で解雇した。そのことが原因で二人の仲は修復不能になったと報じられている。さらに2015年、データをどう活用するかについて主力選手(プーホルスと言われている)がディポトGMのやり方に反発し、コーチ陣を擁護する姿勢を見せたためディポトは孤立した。結果としてエンゼルスはディポトを切らざるを得なくなった。


アルトゥロ・モレノ(74歳) (エンゼルス・オーナー)

Embed from Getty Images

エンゼルスを裸一貫から買収へ

アリゾナ州出身。メキシコ系移民の子で、ヒスパニックとして初めて、アメリカのプロスポーツチームのオーナーになった。

2003年のシーズン中、モレノが56歳の時にエンゼルスを前オーナーのディズニーグループから買収した。ちなみに前年の2002年にエンゼルスはチーム史上初のワールドシリーズ制覇している。買収価格は180ミリオンドル(約160億円)だったが、2020年のチーム資産価値ランキングではメジャー9位の1975ミリオン(約2000億円)、買収時の10倍以上になっている。

貧しいメキシコ系移民の子であったが、野外広告のビジネスに成功し、会社上場、球団買収とアメリカンドリームを体現した。社員として入社した広告会社では10年足らずの間に、会社の利益を50万ドルから900万ドルにしたという超凄腕の営業マンだった。

子供の頃から野球好きで、球団買収は永年の夢だったという。一野球ファンとして経営する姿勢はファンの間で高い支持を得た。例えばチケット価格や球場内のビールが高すぎるとして値下げに踏み切ったことはモレノを語るエピソードとしてよく知られている。ホーム、アウェイを問わず、ほとんどのエンゼルスの試合を観戦している。ホームではオーナー席からしばしば抜け出して、ファンとコミュニケーションしている姿がよく見られた。

メディア戦略
2006年には地元のスペイン語放送のラジオ局を買収すると英語放送に切り替え、2008年にはAngels Radioと名前も変えて、エンゼルスの試合を専門に中継するスポーツ局として生まれ変わらせた。おそらく次のステップはヤンキースやNBAのレイカーズのように自社のテレビ中継局を持つことになるだろう。

ビジネスマンとしては超優秀
モレノは熱心な共和党支持者としても有名。カリフォルニアは民主党の牙城として知られているが、大統領選では臆面もなくドナルド・トランプを強烈に後押ししていた。また2020年にはエンゼルスタジアムとその周りの駐車場、500室のアパート、公園を含む約150エーカー(18.3万坪、東京ドームの約13.6倍)の敷地をわずか150ミリオンドルでアナハイム市から買収した。調査会社によると実際の価値は500ミリオン以上というので、森友学園の篭池夫妻も真っ青のボロ儲けディールだ。もっともモレノはスタジアムのリース契約更新時に、球団移転をちらつかせてはアナハイム市に対して揺さぶりをかけてきた。メジャーリーグの球団を招致したい自治体はいくらでもあるので最初から勝負は見えていたものの、ビジネスマン・モレノの真骨頂発揮だ。

球団弱体化
しかし、モレノが球団を買ってからすでに18年が経過しようとしているが、その間チームは世界一どころかワールドシリーズに進めてもいない。むしろここ5年は弱体化が進んでいる。モレノの名を上げたビールの値下げも、現在では1杯10.50ドルになっている。元々アメリカはビールの税金も安く、350ml.缶ならばスーパーで1本70セントくらいで買えることを考えるとずいぶん高くなってしまったものだ。モレノの熱意も冷めてしまったのか。

物言うオーナー
モレノは選手獲得やチーム運営に対してしばしば口を挟み、その象徴的な例がバーノン・ウェルズの獲得だろう(後述)。モレノが短気で独裁の傾向があることはよく知られ、ウェルズ以外にも彼の鶴の一声でトレードが決まったり、選手やGMがクビになったことは枚挙にいとまがない。だがそれで上手く行った試しはほとんどなく、多くは失敗(ほとんどは大失敗)に終わっている。

結局、大型トレードに伴ってプロスペクトを放出し続けてチームは弱体化し、一方でサラリー高額化による球団経営の圧迫を招いたという批判も強い。

また自らがヒスパニックであることから、多少実力で劣っても中南米系の選手を優遇して入団させているのではないかという噂もある(いわゆるモレノ枠)。

部下が地道に積み上げてきたことがトップの一声でひっくり返る。一般社会でもよくあることだが、そんなタイプの人間はスポーツチームのオーナーには向いていない。似たようなオーナーはNBAなどにも多々いるが、ほとんどの場合チームは低迷し、有力選手からは逃げられ、ファンからは愛想を尽かされる。そう言えば現場に口先介入するオーナーは日本にもいるなぁ。

今後エンゼルスが再生できるかどうかはモレノが口出しせず、100%マドンとミナシアンに任せられるかにかかっている。

ちなみに管理人が理想的なオーナーだと思うのは現NBAロサンゼルス・クリッパーズのオーナー、スティーブ・バルマー氏。元マイクロソフトのCEOで、あのビル・ゲイツの盟友であり、アメリカでも屈指の資産家として知られている。

彼がモレノと最も異なるところは、優秀な人材に球団経営を任せたら、決してチーム編成や補強、試合の采配などには口出ししないことだ。この忍耐強さがモレノには全く欠けている。同じ裸一貫から財を成した2人だが、モレノが自分のアイディアひとつで広告業界で成功を重ねていったのに対し、稀代のくせ者ビル・ゲイツの傍らで陰に日向にマイクロソフトを支えてきたバルマーの生き方の違いから来るものなのだろう。

以下にこれまでモレノが引き起こした事件を列記しておく。

バーノン・ウェルズ事件
トロント・ブルージェイズから2010年のオフにトレードで獲得したバーノン・ウェルズ外野手。ウェルズは成績に見合わない巨額の契約が4年も残っており、ブルージェイズの不良債権と思われていた。しかしモレノはウェルズの獲得を強力に働きかけ、当時のGMトニー・リーギンスに対して、「24時間以内にウェルズを獲得しなければ、お前はクビだ」と伝え、リーギンスはやむなくトレードに動いた。交換選手は当時長打力を売りに伸び盛りの捕手マイク・ナポリとファン・リベラだった。このトレードは酷評され「エンゼルスは史上最悪のトレードをした」「ウェルズを獲るくらいなら何もしないほうがマシだった」と言われるほどだった。

実際翌年のウェルズの成績は打率 .218、出塁率 .248はいずれもMLBワースト。結局わずか1年ほどでレギュラーの座を追われ、退団、引退することになった。そして気の毒なことだがリーギンスはウェルズ獲得と成績不振の責任を取らされオフに解任された。一方で放出したナポリは主軸を打つほどに成長し、しばしばエンゼルス戦でも痛打を浴びせた。その後球団を渡り歩きながらも2017年まで現役を続けた。

ジョシュ・ハミルトン事件
2012年オフにはまたもやモレノの強い意向でテキサス・レンジャースの主砲ジョシュ・ハミルトンと5年1億2500万ドルでFA契約したが、これまた大失敗に終わった。ハミルトンは薬物やアルコール中毒問題を当時から抱えていた。エンゼルスではケガと成績不振に苦しみ、離婚を機に再びドラッグやアルコールに手を出してしまった。この時多くのチームメートはハミルトンを手助けしようとしたがモレノは容赦せず、給料のほとんどを負担する形でレンジャーズへ出戻りさせてしまった。その後レンジャース戦では実質的に給料を払っているハミルトンにしばしば痛打を浴び、エンゼルスファンを苛立たせた。2017年でようやくハミルトンの契約は終了し、エンゼルスはハミルトン問題から開放された。

アルバート・プーホルス問題
2011年オフ、FAのアルバート・プーホルスと10年2億4000万ドルというメジャー史上2位の巨額契約を結んだ。すでに32歳になろうとしているプーホルスと10年契約はさすがに無謀と思われたが、モレノの強い希望で獲得に至った。

プーホルスは今でもエンゼルスの主軸を任されているが、移籍後は期待された成績には程遠く、カージナルス時代の輝きを一度も放っていない。近年は足の故障に苦しみ打率も2割台前半、ホームランも20本そこそこと言う状態だ。最近は逆方向に当てに行くような打撃が増えた。長打は打てなくなった分、何とかチャンスで打点を上げることで最低限の仕事はこなしているといった感じだ。プーホルスとの契約はあと1年残っており実質不良債権化している。ちなみにESPNでは2016年の時点でプーホルスとエンゼルスの契約をメジャー最悪の契約と論じている。
Albert Pujols is crowned Worst Contract In Baseball by ESPN(アルバート・プーホルスがメジャー最悪契約の座に輝いた)

ドジャースとのトレード離脱事件
2020年2月、ドジャースがレッドソックスから前MVPのムーキー・ベッツの獲得に動いた時、そのトレードに絡んでエンゼルスは控え内野手のレンヒーフォを交換要員に、ドジャースから36本塁打を放ったピーダーソンと先発4番手のストリップリングを獲得するというエンゼルスファンにとっては夢のようなトレードが報じられた。

しかしレッドソックスが交換要員の健康状態について疑義を挟んだことからなかなかトレードが決まらなかった(最終的にはサインできた)。その間モレノはトレード話がなかなか進展しないことに腹を立て、ケツをまくってトレードから離脱してしまった。エンゼルスファンを狂喜させたトレードをオーナー自ら潰すとは・・・あきれてモノが言えないとはこのことだ。

スポンサーリンク

スポンサーリンク