CBA(*) が期限を迎え、新たなCBAを結べなかったMLBでは予想通りロックアウトに突入した。このため契約交渉を含む球団側と選手側の接触は禁じられ、各チームの戦力補強はストップすることとなった。そこで現時点でのエンゼルスの補強状況をまとめた。
(*)CBA (Collective Bargaining Agreement、団体交渉協定 )
Bargainは元々「取引する」「交渉する」の意味だが、日本語の「バーゲン」は「(交渉の結果)安くなった物」の意味だけで使われている。
全体的には、とりあえず来期戦力と見なさない選手のカットは終わったが、では代わりに誰を入れるのかの途中でロックアウトになってしまった印象だ。特に投手陣の補強は必須と言われながら、FAで思ったような補強はできていない。
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エース級の若い先発投手をFAで獲ろうとすると4-5年の長期契約が必要となる。一方でエンゼルスはトラウト(残り9年)とレンドーン(残り5年)の二人の大型契約を抱えるため、贅沢税ラインを守りながら、さらに2年後の大谷選手との契約延長を考えると、長期の大型契約はオファーしにくい状況だ。苦肉の策が故障明けでリスクのあるシンダーガードとの1年契約だった。
マドン人脈での選手集めは失敗
2020年から指揮を執るマドン監督だが、自分の配下で過去にプレーした選手を集めたがる傾向がある。キンタナ、コブ、シシェック、ペーニャ、グエラなどがそうだが、コブ以外はすべて失敗と言っていい。やはりコネ採用はどこの世界でも上手くいかないものだ。
あと退団した投手を見ていると、やはり30歳過ぎて目にとまるような成績を残していない投手は、もしやと思って契約してもやはりダメであることが圧倒的に多い。お金はかからないかもしれないが、極めて分の悪いギャンブルと言えよう。麻雀で言えば配牌7種くらいから国士無双を目指すようなものだ。
新加入
ノア・シンダーガード(29歳、投手)
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1年2100万ドルで契約。旧所属のメッツからのQulifing Offerを蹴っているので、エンゼルスはメッツに上位のドラフト指名権を譲渡しなくてはならない。
故障前の2016~2018年の3年間は防御率2.81、WHIP 1.167を叩き出していた大エース。来年はトミージョンからの復活を目指すが、故障前の状態に戻ればエンゼルスの大黒柱になるだろう。しかし思うように回復しなければ計算は立たなくなってしまう。ギャンブルではあるが、1年契約に応じてくれる優良先発投手は彼くらいしかいなかったのも事実。
一つ気になるのは、もしシンダーガードが順調に復活して前半だけで大活躍した場合、エンゼルスはどうするのだろうか?延長契約となると6年2億ドルとかの資金が必要となるはずだ。大谷との契約延長も控えているのにそんな金額出せるのか?再契約できないならトレードデッドラインで泣く泣く放出するのか?復活しても悩ましい問題だ。
マイケル・ロレンゼン(29歳、投手)
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レッズからFAになり、エンゼルスと1年675万ドルで契約。地元アナハイムの出身。
高校時代からエリートで2010年にはレイズに7巡目で指名されるも大学進学。その後2013年にレッズから1巡目(全体38位)で指名されプロ入り。
二刀流と言うことが注目を浴びているが、実際はバッターとしてはメジャー昇格後7年でわずか147打席しか打っていない(ちなみにシャーザーやカーショウは同期間で400打席近く打っている)。それでOPS .710と言う数字はなかなかのものだが、エンゼルスではDHに大谷がいるので代打くらいしか使いようがない。残念ながらエンゼルスでは投手に専念してもらうしかない。
昨年はやや故障がちで29イニングの投球で防御率5.89はキャリア最悪に近い成績。このレベルの中継ぎ投手に675万ドルは高いなというのが実感。しかし2016年~2019年は防御率3.39の数字を残している。パワーピッチャーの不足するエンゼルスで最速99マイルのフォーシームを投げられるのは魅力。本人は先発に再転向したいようだが、あくまでシンダーガードや若手が期待外れに終わった時の保険で基本はセットアッパーだろう。
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アーロン・ループ(33歳、投手)
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メッツからFAとなりエンゼルスと2年1700万ドルの契約を結んだ。左腕からの変則フォームの救援投手である。今年はメッツで65試合を投げ、防御率0.95と大ブレークしたが、出来過ぎの気がしなくもない。キャリア防御率は3.05なので悪くはない。フォーシームは全く投げず、投球の80%以上は球速92-93マイルのシンカーとカッターである。問題は33歳という年齢で、投手によっては急激に成績を落とす時期でもある。エンゼルスでは防御率2点台で投げてくれれば御の字だろう。
タイラー・ウェード(27歳、内野兼外野手)
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27歳。右投げ左打ち。セカンド、ショート、外野を守れるユーティリティプレーヤー。南カリフォルニア出身。ヤンキースからDFAされたところをエンゼルスが獲得。ヤンキースでは今年104試合に出場し、打率268、本塁打0、OPS .677、17盗塁を記録。守備はどちらかというと外野の方が得意。足は速いが、打撃に課題を抱えている。長打力がなくフレッチャーのようなタイプ。
アンドリュー・ベラスケス(27歳、内野手)
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右投げのスイッチヒッター。セカンド、ショートを守る。身長172センチと小柄。ヤンキースからDFAされたところをエンゼルスが拾った。メジャー生活4年間で96試合、181打席、打率.184、1本塁打、OPS .525、3盗塁。ウェードよりもさらに打力は弱い。エンゼルスの補強ポイントはショートなのでとりあえずバックアップとして獲得した感じだ。
残留
ライセル・イグレシアス(31歳、投手)
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エンゼルスからFAになったが、4年58Mで再契約できた。やや割高な気はするが、それでもこのオフのエンゼルスのFA契約の中では1番まともだと思う。クローザーを確保できたことは非常に大きい。もしイグレシアスがFAで流出していたら、投手力は去年よりも低下しかねなかった。
退団
アレックス・コブ(34歳、投手)
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FAとなってSFジャイアンツが2年2000万ドルで獲得。今年の後半は安定していたが34歳という年齢を考えると複数年契約はリスクが高い。残念ではあるが2年契約してまで引き留めるべき選手ではなかったと思う。
ディラン・バンディ(29歳、投手)
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FAとなっていたが、ツインズが1年400万ドルで獲得した。コロナで60試合に短縮された昨シーズンはエンゼルスのエース級の活躍だったが、今年は一転して打たれまくった。残念ながらプレーオフ進出を狙うチームが獲得すべきレベルの投手ではなかった。
スティーブ・シシェック(35歳、投手)
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FA。現在の所はまだ新しい所属先は決まっていない。とにかく引き継いだランナーをことごとくホームへ生還させていたため、防御率3.42という数字のわりに良いイメージがない(口の悪いファンからは『防御率職人』と言われていた)。球威で勝負するタイプでもないのに、68イニングで与四球41はあまりにもノーコン。おそらく球威の衰えを自覚し、それを補うために力を込めて投げた分コントロールが悪くなったと想像する。まさか呼び戻したりはしないよね。
サム・セルマン(31歳、投手)
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DFA。左投げの救援投手。7月末にトニー・ワトソン放出の対価パッケージの一人としてSFジャイアンツから移籍してきた。エンゼルスでは17イニングで防御率6.88と全く振るわなかった。
ジュニオール・グエラ(36歳、投手)
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FA。防御率6.06、BB9は6.1とエンゼルスで最悪の制球力。このまま引退だろう。
ジェイク・パトリッカ(33歳、投手)
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FA。独立リーグでプレーしていたのを今年の夏場にエンゼルスがサインしたがやっぱり使い物にならなかった。
ジェームス・ホイト(35歳、投手)
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FA。マーリンズから春にトレードで獲得してみたが、防御率6.75、BB9が7.9では全く無意味だった。
ルーク・バード(31歳、投手)
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FA。2012年ツインズのドラフト1位指名だったが、結局9年間全く芽が出なかった。メジャー3年間の通算防御率は5.05。
フェリックス・ペーニャ(31歳、投手)
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シーズン途中で解雇。2018年はエンゼルスのローテーションの一角を占めていた。記憶に残るのは薬物中毒で急死したスキャッグスの追悼試合で、3回からマウンドに上がるとそのまま継投でノーヒッターを達成したことだろう。しかし今年は右足ふくらはぎの故障のため開幕から故障者リスト入り。復帰も遅れ今シーズンはわずか2試合の登板で終わった。
カート・スズキ(38歳、捕手)
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FA。ナショナルズからFAの1年契約で今年から加入し、スタッシのバックアップキャッチャーとして72試合に出場。しかし衰えは隠せず、盗塁は43回走られて刺したのはわずか8回(阻止率18.6%)。キャッチング、フレーミングにも難がありパスボールの多さに投手陣は泣かされた。
フィル・ゴセリン(33歳、内野兼外野手)
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エンゼルスの支配下にあったが、契約を更新されずノンテンダーFAになった。
昨年フィリーズをFAになったところをエンゼルスとマイナー契約して這い上がってきた。シーズン終盤はトラウト、レンドーン、アップトンを欠く中、マドン監督が左、右、左とジグザグ打線を好んだため、大谷の後ろを打つ事が多くなった。しかし大谷への敬遠攻めのあと凡退する事が多く打線の大きな穴になってしまった。打率.261、本塁打7本、OPS .675は控えのユーティリティプレーヤーとしては悪くなかったが、やはり3番を打つには荷が重すぎた。
キーン・ウォン(26歳、内野手)
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11月に解雇。ハワイ出身の中国系アメリカ人。2019年にレイズからDFAされエンゼルスに拾われた。今年は32試合に出場したが、打率 .167、OPS .465とあまりにも非力でメジャーレベルにはほど遠かった。
デクスター・ファウラー(35歳、外野手)
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FA。メジャーデビュー直後は俊足好打の外野手としてロッキーズで頭角を現した。
実績あるベテランだったが、今年の2月に年俸1450万ドルのうちカージナルスが1275万ドルを負担する形でエンゼルスへトレード(エンゼルスが不良債権を引き取った形)。しかも開幕直後に左膝前十字靱帯の断裂の大ケガでそのままシーズンエンドとなってしまった。
ファン・ラガレス(32歳、外野手)
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FA。昨年メッツをDFAされたが、エンゼルスとマイナー契約。ファウラーの離脱のため急遽メジャー昇格を果たした。112試合に出場したものの、打率 .236、OPS .638、本塁打7本と低調な成績で終わった。2014年にはメッツでゴールドグラブ賞を獲得するほどの守備の達人であったが、今年の右翼の守備を見る限り衰えが激しく、むしろ守備の穴になっていた印象。
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これまでの補強を見れば大谷移籍の環境整備としか思えない。
「頑張ったけど、彼は出て行かざる得なくなった」みたいな。
大谷は手放さないでしょう。もちろん大谷が出て行くと言えば仕方ないですが。シンダーガードが1年で出て行くと思いますので資金は出来ます。
とりあえず、勝率を5割に戻せられる可能性が高い選手の”底上げ”は出来たと思います。
レンジャースやメッツのように大金を叩いて大物選手を獲得するのはこれ以上リスキーですし、
来シーズンにトラウトやレンドーン選手が復帰してウォルシュ、フレチャーといった
若手が今シーズン並みに活躍されてもらえれば十分です。
来年のエンゼルスは、『7月のオールスターまでに貯金10ぐらいの好成績を残す』
そして7月末までに大物選手をトレードでの獲得でPS進出を狙うのが賢明だと思っています。
何年も続けて負け越しですから、『7月のオールスターまでに貯金10』は現実的な目標ですね。5-7の貯金でもいいかと。サンドバル、ウォルシュ、アデルの成長とレンドーンの復活が鍵でしょう。