エンゼルスの前半戦を振り返る(3) 監督采配

最初の2週間で開幕ダッシュを成功させ、貯金を10作り、一時はリーグ首位にも立っていたエンゼルスだが、その後は低空飛行が続き、結局前半戦は49勝48敗、わずか貯金1で終わった。地区首位のアストロズからは14ゲームも離され、ワイルドカード争いも9ゲーム差という苦しい立場に追い込まれている。

ケガ人続出という考慮すべき理由があったにせよ、マイク・ソーシア監督の采配には疑問符が付くことも多い。

「左投手には右打者」という古いセオリーにこだわりすぎる

確かに前半の大谷は対左投手の打率は悪かった。しかし、それでも起用し続けないといつまでたっても左投手を打てないのも事実。実際「左対左」ほど「右対右」がやかましく言われない理由は、単に右打者は右投手との対戦が多いからということ以外に見つからない。目先の数字を追うのではなく、選手を育てることを視野に入れれば、中途半端なベテラン右打者を使うくらいなら、若い左打者を根気よく使って欲しかった。

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ソーシアはインタビューなどでは「ショーヘイは日本では左投手をよく打っていたから、問題ないと思う」とか言っておきながら、実際には左投手が先発すると引っ込めるという言行不一致の采配。大谷もさぞかしフラストレーションがたまっているのでは?と想像してしまう。

打てなくてもベテランに固執する選手起用

開幕と同時に極度の不振に陥ったカルフーン(30歳)を(左打者なので、相手が左投手の時に引っ込めることはあっても)、2ヶ月近く先発で使い続けた。カルフーンの不振は並のスランプではなかった。打率は.150を切り、OPSは3割台とメジャーの規定打席到達者の中でもブッちぎりの最下位だった。結局、6月にDL入りさせてマイナーでバッティングフォームを変えたことでようやくスランプを脱出した。

カルフーンがいない間に重用されたのが34歳のヤングだった。しかしヤングもカルフーンとあまり代わらず6月は52打数10安打の打率.192に過ぎなかった。衰えが目立ちどう見ても今シーズン限りのヤングを使うくらいなら、ブラッシュ、ハーモセヨなどの若手を起用した方がいいと思うのだが若手の起用は極めて限られていた。

同様に内野もFA組のコザート(32歳)、キンスラー(35歳)に加えて、32歳のバルブエナなどを好んで起用したが、いずれもが2割そこそこの打率しか残せていない。もちろん打率2割5分、OPSは7割を切る状態の38歳プーホルスを忘れてはいけない。残念ながらもはや中軸を任せられる成績ではない。

低いチーム打率にもかかわらず強攻策オンリーの攻め

エンゼルスのチーム打率 .244はメジャー30球団中22位。打力は平均以下と言って良い。にもかかわらず送りバントは97試合で4度しかなかった(メジャー27位)。2000年代前半はバント、盗塁、エンドランを駆使して、常に1、3塁、1,3塁と畳みかけるように攻撃したスモールベースボールの時代もあったのに、足が遅く、器用さもない、一発頼みの選手の増加とともにそういう文化も霧消してしまったかのようだ。

ソーシアは基本無死でランナーが出ても動かず選手任せである。「下位打線だからバントで送らせていれば1点だった」とか「無死3塁でも犠牲フライすら打てずランナー残塁」といったちぐはぐな攻撃が多かった。

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また無死2塁で1,2塁間へゴロを打ってランナーを3塁へ進めるような、いわゆる「Productive Out」のプレーがあまりなかったし、そういう意識を感じる選手もいなかった。

先発投手を早く代えすぎ、リリーフを酷使

昨日の投手陣の分析でも触れたが、エンゼルスのリリーフ投手投入数はメジャー第2位。また先発が80球未満で降板した試合数も2位タイの多さである。他チームでは100球前後投げる先発が多い中、ソーシアは90球ほどで代えてしまうことが多い。イニングで言うと6回途中くらいだ。すると必然的にリリーフで残りの3イニング強を乗り切らなくてはならなくなるので、救援陣は酷使された。

例えばリリーフ陣の登板試合数を見てみると、メジャー最高に並ぶアルバレス(48試合)、同8位のベドロージャン(46試合)、21位のラミレス(45試合)、34位のパーカー(43試合)など軒並み過剰登板と思われる。さらにラミレスは45試合以上登板している22投手の中で最も多い投球イニングの54イニングを記録している。

それでリリーフ陣が強力ならまだしも、リーグ平均以下レベルなので、何度も逆転負けを喰らってしまっている。セーブ失敗はメジャー5位の17度を数える。セーブ成功率は56%しかない。

過度のリリーフ陣への依存からくる疲弊、そして疲弊するが故に失敗が増えるという悪循環を繰り返すソーシアの投手起用には疑問符が付かざるを得ない。

かつての名将がいまや凡将に

現在はアストロズのフライボール革命に象徴されるようにデータ野球全盛の時代だ。Statcastなどのデータを駆使し、数学者や物理学者まで雇って勝つための新たなセオリーを探し出す。これからもっと詳細なデータや分析手法が編み出されていくことだろう。

かつては2度のリーグ最優秀監督賞(2002年、2009年)の栄誉にも輝いたソーシアだが、それも今は昔。私には時代の波に遅れた凡将としか思えない。

カージナルスを見習え!

7月14日、セントルイス・カージナルスマイク・マシーニー監督を解任した。打撃コーチ2人も同時に解任している。マシーニーは2020年まで2年半も契約期間は残っていたのにそれを解除して解任した。

マシーニーはそんなに酷い成績だったのかと思いきや、カージナルスは前半を終え48勝46敗でナ・リーグ中地区の首位カブスと7.5ゲーム差の3位だ。ワイルドカード争いも4ゲーム差とエンゼルス(9ゲーム差)よりは遙かに射程圏内だ。

それにマシーニーは2013年にワールドシリーズにも出ている。マシーニーに比べると2002年以降ワールドシリーズどころかリーグ優勝決定戦すら突破できないエンゼルスのソーシアはかなり見劣りする。

カージナルスは打撃コーチも2人も解任とのことだが、チーム打率だってメジャー22位のエンゼルスより上位の17位である。

ではなぜカージナルスはこんなにも思い切った手が打てるのか?それはおそらくカージナルスは「システムで勝つ」チームだからだろう。選手育成からFA戦略、補強ポイント、チーム戦術まで、合理的な意思決定を下せるシステムが完成されているに違いない。だからこそ、そのシステムに合わない要素は思い切って排除出来るのだろう。裏を返せばエンゼルスのようにオーナーやGMの思いつきで人事や補強を行うことがないということだ。

今年、ソーシアはエンゼルスの監督生活19年目で、10年契約の最終年だ。果たして、エンゼルスはソーシアを切ることが出来るのか?あまり手遅れにならないことを祈る。

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