エンゼルス選手紹介 2022年(野手)

2022年のエンゼルスの野手陣を紹介する。

多くの計算違いが起こった2021年

昨年はトラウトとレンドーンの二枚看板が二人ともケガで長期離脱してしまい、想定していたオフェンスとは全く異なるものになってしまった。

名手シモンズの後釜に獲得したショートのホセ・イグレシアスは守備の名手という触れ込みだったが、衰えが著しく実際は守備の穴になってしまっていた。

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正右翼手として計算していたデクスター・ファウラーは開幕直後に靱帯断裂の大ケガを負ってシーズン終了となってしまいこちらも計算が狂った。

バックアップ捕手で獲得した37歳のカート・スズキは打撃、守備、走塁とも衰えが激しく、特に守備面はフレーミング技術のなさ、キャッチングの拙さから投手陣に負担をかけた。

また5年契約4年目のアップトンは淡泊な打撃、緩慢な守備が目立ちもはや往年の姿はなかった。

そして10年契約最終年のアルバート・プーホルスは5月にはDFAされてドジャースへと移籍した。プーホルスに関してはエンゼルスの9年間、期待されたカージナルス時代の輝かしい成績を上げることは一度もなく、ただただ衰えゆくだけで、エンゼルスの2500万ドルを超える投資に対する見返りは限りなく薄いものとなってしまった。

このような数多くの計算違いのために、2021年のエンゼルス攻撃陣は苦闘した。大谷とウォルシュがかろうじて打線を引っ張ったがそれだけで足りるはずもなく得点力は低下した。

野手の積極補強には動かず、若手の底上げを図った2021年オフ

労使交渉の長期化でオフの動きは大きく制限されてしまったが、結局エンゼルスはトレードやFAで有力な野手に食指を伸ばすことはなかった。カート・スズキと再契約したこと、内外野守れるユーティリティプレーヤーを何人か獲得したことくらいで、2022年は若手の底上げで戦力アップを図ることに注力した。

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さらに開幕直前にあと1年契約が残るアップトンをDFAとした。キャンプでは好調で生き残りのために一塁守備にもチャレンジしていたアップトンをこの時期に戦力外としたのは少々意外だったが、それもアデル、マーシュ、ウォードといった若い外野手が成長し、一本立ちする目処が立ったからだろう。

退団した主な野手

  • ホセ・イグレシアス
  • デクスター・ファウラー
  • アルバート・プーホルス
  • ジャスティン・アップトン

新規加入の主な野手

  • カート・スズキ(38歳、FAで1年再契約)
  • マット・ダフィー(31歳、カブスからFA。1年契約)
  • タイラー・ウェイド(27歳、ヤンキースからトレード)

管理人の考えるベストオーダー

(1)大谷(DH)
(2)トラウト(中)
(3)レンドーン(三)
(4)ウォルシュ(一)
(5)アデル(右)
(6)マーシュ(左)
(7)スタッシ(捕)
(8)ロハス(遊)
(9)フレッチャー(二)


それでは2022年のエンゼルスの野手陣を紹介しよう。

その他メジャー定着を狙う選手


キャッチャー

マックス・スタッシ(30歳、右投げ右打ち、178cm、背番号33)

正捕手としてエンゼルスの投手陣を引っ張る。打撃面での貢献も期待

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2021年の成績

打率 本塁打 打点 OPS 盗塁
.241 13 35 .752 0

カリフォルニア州出身。兄や叔父がメジャーリーガーで、父親もマイナーでプレーしたという野球一家に生まれる。プロ入りは2009年、アスレチックスからドラフト4巡目(全体123位)で指名された。2013年にアストロズにトレードされると同年メジャー初昇格を果たした。しかし2017年までの5年間は出場機会に恵まれず、わずか49試合、89打席しかプレーさせてもらえなかった。2018年にはブライアン・マッキャン、マーティン・マルドナドらを抑えてようやく出場のチャンスを掴み、88試合で打率 .226、8本塁打を記録した。

エンゼルスへ加入
2019年、エンゼルスは正捕手として獲得したルクロイのキャッチングがあまりにもお粗末で、パスボールのオンパレードに頭を痛めていた。7月、ルクロイが脳震盪で故障者リストに入ったのを機に後釜を探し始め、白羽の矢を立てたのがアストロズのスタッシだった。スタッシは守備力は高いものの、打率は1割台の低空飛行が続いていたが、それには目をつむって獲得した(同時にルクロイは解雇)。スタッシはエンゼルス加入後、守備ではまずまずの貢献を見せたが打撃は酷かった。20試合に出場して42打数3安打、打率 .071、本塁打0本。いくら何でもこの数字は苦しすぎた。

2020年エンゼルスの正捕手に
2020年、短縮シーズンだったがスタッシは打撃面で進歩を見せた。開幕時はジェイソン・カストロの控えだったが、8月末にカストロがトレードで放出されると9月は正捕手に定着。打率も残したが、それまでのキャリア7年で12本塁打だったのが、わずか2ヶ月ほどで7本塁打を放った。この活躍が認められて2021年は正捕手の座を射止めた。

2021年は度々のケガもあって出場は87試合に限られたものの、堅実な守備とチャンスに強いバッティングを見せた。2022年は正捕手としてエンゼルスを引っ張るだろう。


カート・スズキ(38歳、右投げ右打ち、180cm、背番号24

若手に人材がおらずやむを得ず再契約か。キャッチングに難あり。

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2021年の成績

打率 本塁打 打点 OPS 盗塁
.224 6 16 .636 1

2022年3月にエンゼルスと1.75Mドルで1年契約。

昨年1年契約を結んだ後FAとなった。私は守備に大きな問題がありバッティングも衰えが目立つスズキとの再契約はあり得ないと思っていたが、エンゼルスのマイナーにはメジャーで使えるような捕手は育っておらず、外部からの補強も上手く行かず、ミナシアンGMは再契約を決断したのだろう。

祖父母が名古屋出身の日系3世
ハワイ出身だが、大学はエンゼルスタジアムから車で10分のカリフォルニア州立大学フラトン校。同校で全米チャンピオンになり全米大学代表チームにも選出された。2004年アスレチックスから2巡目(全体67位)で指名されプロ入り。2007年にメジャーデビュー。その後ナショナルズ、ツインズ、ブレーブス等へ移籍を繰り返したが、2019年はナショナルズでワールドシリーズ制覇を経験した。メジャー15年で通算打率 .257、OPS .705と数字は平均的だがチャンスに強い打撃が持ち味。

一方守備面では年齢と共に衰えが目立ち、2015年以降盗塁阻止率が20%を超えたのは2017年(23.6%)だけである。さらにフレーミング技術を含むキャッチングには大きな問題を抱えており、スズキが捕手を務めるとピッチャーに負担がかかる。マドン監督はなぜか大谷が投げる時にスズキを起用する傾向があった。スズキの守備能力を考えると今年はそれはやめてほしい。

また走力もメジャー最下層であり、エンゼルスではプーホルス並の鈍足である。

エンゼルスはキャッチャーも長年固定できておらず、正捕手が毎年入れ替わる状態が続いている。打撃と守備力、リーダーシップを兼ね備えるキャッチャーは球界でも貴重な存在なので、是非マイナーから育てて欲しい。


内野手

ジャレッド・ウォルシュ(28歳、一塁手、左投げ左打ち、183cm、背番号22)

オールスターにも選出された伸び盛りの若手内野手!

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2021年の成績

打率 本塁打 打点 OPS 盗塁
.277 29 98 .850 2

2022年はメジャー最低保障年俸(70万ドル)。

超低位指名からメジャーへ
2015年にエンゼルスからドラフト39巡目(全体1185位)で指名される。この年エンゼルスは40巡目まで指名したので下から2番目、つまり入団時はほとんど期待されていなかった。ちなみに1巡目はテイラー・ウォードでフレッチャーが6巡目だった。

当初は一塁も守れるが左の救援投手としても投げられる二刀流選手として注目された。2019年5月にメジャーデビューすると打者としては31試合89打席で打率 .203、1本塁打、OPS .605の成績だった。投手としては5試合に登板して5.0イニング、防御率1.80の数字を残した。

2020年シーズン、7月24日の開幕直後はベンチ入りしたものの全く打てず10日後にはマイナー落ちさせられた。しかし8月28日に再昇格後、チームはプレーオフが絶望となったこともあって先発起用されると急に打ち出した。9月2日から9月17日まで13試合で48打数20安打の打率 .417、7ホーマーと打ちまくって手がつけられなかった。最後は息切れしたが最終的に打率 .293、9本塁打、OPS .971と素晴らしい数字を残しレギュラー獲得への手がかりを掴んだ。

大谷と二人で打線を支えた2021年シーズン

2021年シーズンはプーホルスを押しのけて正一塁手となった。特に前半の活躍はめざましく、6月上旬まで打率3割をキープした。ホームランも大谷に次ぐ29本を打ち、トラウト、レンドーンのいない打線を大谷と二人で引っ張った。大谷が1回7失点でKOされた6月30日のヤンキース戦では9回に難攻不落のクローザー、チャップマンからこの試合2本目となる同点満塁ホームランを放って大谷の負けを消し、劇的な逆転勝ちの立役者となった。

右打者の多いエンゼルスでは大谷と並んで貴重な左バッターだ。2022年シーズンは30本塁打、OPS .900を目指して頑張って欲しい。


デビッド・フレッチャー(26歳、内野手、右投げ右打ち、175cm、背番号22)

小柄ながら軽快な守備としぶとい打撃、勝負強さが光るファイトマン

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2021年の成績

打率 本塁打 打点 OPS 盗塁
.262 2 47 .622 15

2021年に総額27Mの5年契約を結んだ。2022年の年俸は4M。

出身はエンゼルスのお膝元オレンジ郡オレンジ市。2015年にエンゼルスからドラフト6巡目(全体195位)で指名される。2018年にエンゼルスでメジャーデビュー。元々内野手だが外野もできるユーティリティ・プレーヤー。身体は小さいがファイトあるプレーと勝負強いバッティングでレギュラーを掴んだ。エンゼルスがワールドシリーズを勝った時の名ショート、デビッド・エクスタインを思わせる。

長打力こそないが、チャンスに強いヒットメーカー

デビュー以来打率は .275(2018)、.290(2019)、.319(2020)と毎年着実にステップアップしてきた。

2019年はダントツチーム最多の173本のヒットを放った(2位はトラウトの137本)。これはア・リーグ全体でも13位にランクされる数字だ。2塁打30本もチームトップ。出塁率はトラウト(.438)に次ぐチーム2位(.350)で、ホームランこそ少ないが49打点はチーム5位だ。WARもトラウト(8.3)に次ぐチーム2位の3.8を記録した(大谷の2.5よりも高いことは注目に値する)。キャッチャーとファースト以外は全て守れるし、好守で多大な貢献をもたらした。

2020年はチームで唯一3割を打ち、出塁率( .376)もレンドーン( .418)、トラウト( .390)に次ぐ3位だった。

ボール球に手を出して打率も出塁率も低下した2021年

しかし2021年は不調に陥り、打率 .262、出塁率も3割を切ってしまい( .297)、キャリア最低の数字に終わった。元々早打ちで四球が少ないが(2021年は20打席に一つ)、昨年は何が何でもバットに当てるという意識が先に立って、ボール球に手を出している感があった。もう少し好球必打のアプローチができれば打率も上昇するのではないだろうか。

ポジションは二塁が本職だが、2022年はショートを守ることが多くなると予想されている。外野も守れるが、今年は外野に人材が育っているので内野専門となるだろう。


アンソニー・レンドーン(31歳、三塁手、右投げ右打ち、185cm、背番号6)

ケガに泣いた過去2年の汚名返上に燃える!

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2021年の成績

打率 本塁打 打点 OPS 盗塁
.240 6 34 .712 0

2019年12月にエンゼルスと7年総額245ミリオンの契約を結んだ。オプトアウトは含まれていないので36歳になるシーズンまでエンゼルスでプレーする。2022年の年俸は36.57Mドル。トラウト(37.11M)と並ぶチームでも最高級取りである。

2021年は3度のIL入りを経て、8月に右股関節の手術を受け出場はわずか58試合にとどまった。打率.240、6本塁打、34打点、OPS.712はキャリア最低の成績であり、7年245Mの超大型契約をしたエンゼルスとしては全く期待外れの2年間だった。

レンドーンによると「2020年から原因不明の痛みに耐えながらプレーを続けてきた。刺すような痛みがあり股関節周りを器具で固定されているように両脚に力が入らず、動かすこともままならなかった。精密検査の結果右股関節にすべての原因があると分かり手術に踏み切った」とのこと。もしそれが本当なら2022年は健康を取り戻し、ナショナルズ時代の猛打を取り戻してくれるだろう。

レンドーンのこれまで

ナショナルズ時代
テキサス州ヒューストン出身。テキサスの私立ライス大学で4割近い打率と長打力を誇るスラッガーとしてならし、全米大学代表として日本にも来日した。2011年ドラフト1巡目(全体6位)でナショナルズから指名されてプロ入り。

入団から2年もたたない2013年4月にメジャー昇格すると早々と二塁のレギュラーを獲得。98試合に出場して打率.265、OPS.725の成績を残した。その後守備位置は三塁に変わるが順調に成績を伸ばし2017年以降は3年続けて3割をマークしている。

2019年はそれまで主砲のブライス・ハーパーがFAで抜けたため、名実ともにナショナルズの中心打者としてチームを牽引した。チームはナ・リーグ東地区2位ながらワイルドカードでポストシーズン進出を決めた。

大活躍の2019年ポストシーズン
ドジャースから王手をかけられた地区シリーズ第4戦で3打点を挙げ、続く第5戦では逆転勝利につながる本塁打を放った。カージナルス相手のリーグチャンピオンシップでも毎試合安打を放ち、チーム史上初のワールドシリーズ進出に貢献した。

アストロズとのワールドシリーズでは王手をかけられた第6戦でレンドーンは5打点をあげて逆王手をかけた。第7戦は6回まで2点をリードされる苦しい展開だったが、7回にレンドーンのソロとケンドリックの2ランで逆転してそのままワールドシリーズを制した。レンドーンはポストシーズン全体で打率.328、5本塁打、15打点、OPS1.003の大活躍だった。

この年レンドーンはナショナルリーグのMVP投票で3位に入った(1位ベリンジャー、2位イエリッチ)。

エンゼルスへ移籍
2019年オフ、エンゼルスはゲリット・コールの獲得を目論んだが、ヤンキースとの争奪戦に敗れるとすぐに方針を転換し用意した資金をレンドーンとの契約につぎ込んだ。

最大の目標だったエース級の先発投手の補強は叶わなかったが、永年の課題であった三塁手をレンドーンで埋めることができたのは大きな収穫だ。何しろ三塁は2009年のチョーン・フィギンスを最後に固定できず、トレードやコンバートもことごとく失敗してきたエンゼルスの鬼門だった。2019年、ポジション別のOPSでエンゼルスの三塁手はメジャー最低だったのだ。


マット・ダフィー(31歳、二塁手、遊撃手、三塁手、右投げ右打ち、188cm、背番号5)

堅実な守備と打撃が武器のベテラン内野手

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2021年の成績(シカゴ・カブス)

打率 本塁打 打点 OPS 盗塁
.287 5 30  .738 8

カリフォルニア州ロングビーチ出身の地元選手。2012年SFジャイアンツから18巡目(全体568位)で指名されてプロ入り。2014年8月にメジャーデビューするとその年のプレーオフにもベンチ入りし、ジャイアンツの世界一を経験した。2015年は三塁でレギュラーに定着しジャイアンツの3番を打った。

2016年にトレードでレイズへ移籍すると主にショートで出場した。しかし2017年は下半身のケガに悩まされ出場機会を大きく減らし、2019年オフにはレイズからDFAされた。その後ヤンキースのマイナーを経て、2021年はカブスでメジャー昇格を勝ち取ったがオフにFAとなり、エンゼルスと1年1.5Mで契約した。

長打力にはやや欠けるものの守備には定評があり、昨年カブスで97試合に出場しWARは1.6を得ており、まだまだレギュラーでやれる実力を見せている。本職は三塁手だが、二塁やショートも守れる。このクラスの選手を年俸1.5Mで獲得できたのはエンゼルスのフロントのヒットだろう。


外野手

マイク・トラウト(30歳、センター、右投げ右打ち、188cm、背番号27)

3度のMVPを誇るメジャー最高選手!ケガからの復活を期す!

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2021年の成績

打率 本塁打 打点 OPS 盗塁
.333 8 18 1.090 2

2019年春に2030年までの契約を結んだ。2022年年俸は3,711万ドル。2030年(38歳のシーズン)まで毎年この金額が保証されている。この契約にはトレード拒否権は含まれているが、途中で選手側から契約解除できる権利(オプトアウト)は含まれておらず、実質エンゼルスとの生涯契約である。

2021年、トラウトはキャリアでも最高のスタートを切ったにもかかわらず5月に右足ふくらはぎを痛めてIL入り。トラウトはオールスターにも選出されていたが、このケガが長引き2021年シーズンは最後までプレーすることはなかった。36試合出場というのはキャリアで最低の数字である。

2022年シーズンはスプリングトレーニングにも無事参加し、初出場のオープン戦でいきなり2安打して復活を強く印象づけた。足の負担を考慮してエンゼルスはトラウトを負担の少ないレフトへコンバートすることも検討したが、結局トラウトの希望で今シーズンもセンターを守ることになった。

トラウトのこれまで

ニュージャージー州出身。2009年ドラフトでエンゼルスが1巡目(全体25位)で指名した。2011年7月にメジャーデビュー。その年は40試合で打率.220、5本塁打と結果を残せなかった。しかし翌年4月ボビー・アブレイユを解雇したエンゼルスはトラウトを再昇格させた。主に1番打者で起用されるといきなり打ちまくって最終的に打率.326、30本塁打、83打点、OPS .963、49盗塁と新人離れした成績を残した。満票で新人王になりMVP投票でも三冠王のミゲル・カブレラの次点となった。それ以降、毎年のようにWARではリーグトップの数値を叩き出しMVP級の活躍を続けた。

3度目のMVP受賞
2019年はキャリアハイとなる45本塁打を放つなど変わらぬ活躍を見せ、2014年、2016年に続き3度目のア・リーグMVPを受賞した。投票結果は1位トラウト、2位ブレグマン(アストロズ)、3位セミエン(アスレチックス)だった(西地区ばかりだ)。実質10年間のメジャー生活だが、9年連続でMVP投票の5位以内に入っているのは凄いとしか言いようがない。加えてこれまで2位も4回ある。

プレースタイル
トラウトのすごさは高いレベルでの安定感だ。彼の辞書には不振や不調という言葉がないかのように毎年、毎月安定した数字を残している。その基本にあるのは球をギリギリまで引きつけて、コンパクトなスイングでボールを叩けることだろう。特に低めのボールには滅法強く、低めのボールを決め球にする投手には辛い相手だ。

ただ主要打撃3部門のタイトルにはあまり恵まれず、2014年に打点王を獲得したことがあるだけだ。あと2012年には49盗塁で盗塁王となった。しかしリードオフマンから次第に主軸としてのバッティングを期待されるようになってから盗塁は漸減している。

守備に関しても俊足を活かした広い守備範囲を誇り、たびたびフェンス際でホームランボールをジャンピングキャッチする。唯一の弱点が肩の強さが平均並みなことと言われている。しかし2019年7月23日のドジャース戦でセンターからバックホームした送球は時速158kmを記録し、決して肩が弱いわけではないことを証明して見せた。

5年で4回目の故障者リスト入り
2017年にトレードマークのヘッドスライディングの際、左手親指の靭帯を断裂し約1ヶ月半の自身初の故障者リスト入りを経験した。2018年は8月に右手首の故障で2度目のDL入り。2019年9月には右足に神経腫である「モートン病」を発症、その除去手術を受けてシーズン終了となり、MVPは取ったが134試合の出場にとどまった。そして2021年は右足ふくらはぎの故障で5月に離脱するとそのままシーズン終了まで出場することはなかった。2016年以前はほぼ全試合に出場し続けてきただけに最近ケガが増えてきたことは少々気になる。

2020年はコロナ禍で60試合の短縮シーズンだった。162試合換算だと46本のホームランを打ち、MVP投票でも5位に入った。しかし打率 .281はメジャーに定着した2012年以来で最も悪い。ちなみにMVP投票5位というのも実は一番悪い。これまでの最悪は2017年の4位でそれ以外の年は1位か2位しか取ったことがない。一方で46打点は162試合換算だと124打点に相当する数字でこれはキャリアハイである(過去最高は2014年の111打点)。

プレーオフの経験はわずか3試合のみ
これほど最高の選手ながらプレーオフでプレーしたのは2014年のみ。その年も一回戦でロイヤルズに3連敗して終了。自身も3試合で打率 087と不振にあえいで終わってしまった。その後もチームは投手陣に問題を抱え、長らく安定した勝率を残せていない。そのためエンゼルスはトラウトのプライム(絶頂期)を浪費しているとの批判が絶えない。果たして今年はプレーオフでトラウトを見られるだろうか?

ブライス・ハーパーを遥かに超える成績
トラウトは同世代のスーパースターであるブライス・ハーパーとよく比較されるが、成績的にはトラウトが圧倒している。デビュー以降の主要な数字を比較するとほとんどの数字でトラウトの圧勝だ。

試合 打率 本塁打 打点 四球 三振 盗塁 出塁率 OPS
トラウト(9年) 1199 .305 285 752 803 1118 200 .419 1.000
ハーパー(8年) 1084 .276 219 635 684 1012 90 .385 .897

トラウトは性格も真面目で謙虚。高校時代からのガールフレンドと2017年に結婚した。ビッグマウスで悪童のイメージが強いハーパーとはここでも対象的である。

ちなみにプライベートでは無類の気象マニアとして知られている。嵐が起きると追っかけている。キャンプ地のアリゾナ州近郊に雪嵐が接近中と知った際には、休日だったために2時間半かけて車を運転し、一日中吹雪を眺めていたという。また彼のスマホには世界の気象情報を網羅する複数のアプリがインストールされており、同僚らも試合が雨天中止か微妙なときは、真っ先にトラウトに尋ねるらしい。


ジョー・アデル(22歳、ライト、右投げ右両打ち、190cm、背番号7)

期待の5ツールプレーヤーがついに才能開花!

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2021年の成績

打率 本塁打 打点 OPS 盗塁
.246 4 26 .703 8

2022年はメジャー最低年俸(70万ドル)での契約。

ノース・カロライナ州出身。2017年エンゼルスがドラフト1巡目(全体10位)で指名してプロ入り。身体能力が同僚のブランドン・マーシュとともにマイナーで最高と言われており、「ミート力」「長打力」「走力」「守備力」「送球力」の5つの能力すべてが優れているという「5ツール・プレーヤー」との評判を取っていた。高校時代はピッチャーとして150キロ代後半の速球を投げていたという。父親はNFLからドラフト指名されたこともあるアメフト選手で、父親譲りの俊足も見物(みもの)である

MLBのプロスペクト・ランキングでも全体5位に入るほどの超有望株で2019年秋にプレミア12大会のアメリカチームの一員として来日し、日本のファンにも強い印象を残した。

2020年はコロナ禍でマイナーリーグは全て中止になってしまった。まだ3年目で未熟さの残るアデルには試合経験が必要と判断したエンゼルスは時期尚早ではあったが8月3日にメジャーデビューさせた。結局ほぼ先発で38試合に出場したものの、124打数20安打(.161)と大きく低迷しメジャーの厚い壁に跳ね返された。

2021年は主にマイナーでプレーしたが、メジャーでも35試合に出場し、打率.246、4本塁打、OPS .703と成績は改善の傾向を見せた。

そして迎えた2022年のスプリングトレーニング。アデルは15試合で打率 .308、3本塁打、OPS .974と大活躍。成長と飛躍を確信させてくれた。公式戦での活躍が楽しみである。


ブランドン・マーシュ(24歳、レフト、右投げ左打ち、193cm、背番号16)

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俊足好打の外野手、アデルとともにエンゼルス外野陣の黄金時代を築くか。

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2021年の成績

打率 本塁打 打点 OPS 盗塁
.254 2 19 .673 6

2022年はメジャー最低年俸(70万ドル)での契約。

ジョージア州出身。2016年エンゼルスがドラフト2巡目(全体60位)で指名してプロ入り。メジャー昇格は2021年。トラウト、アップトンらのケガで昇格のチャンスが巡ってきた。70試合に出場すると打率 .254、2本塁打、OPS .672とまずまずの成績を残した。

高校時代から野球と同時にアメリカンフットボールの選手として知られ、卓越した走力と強肩で広い守備範囲を誇る。

迎えた2022年のスプリングトレーニングでは15試合で打率 .275、3本塁打、OPS .843と成長したところを見せてくれた。マーシュとアデルの成長がエンゼルスの外野陣の充実を示し、結果としてアップトンがDFAされることになった。


大谷翔平(27歳、投手&DH、右投げ左打ち、193cm、背番号17)

別項掲載


その他メジャー定着を狙う選手

2018年以降、若手選手を何人もメジャーデビューさせたが、多くは打撃面で苦労しておりインパクトのある成績を残せていない。正直なところトラウト以降オールスターレベルにまで育った若手はウォルシュくらいである。育成が悪いのかスカウティングがおかしいのか、貧弱なファームはエンゼルスの長年の課題だ。また他チームから移籍してきたベテラン崖っぷち組もメジャー定着、レギュラー奪取を虎視眈々と狙っている。

ジャック・メイフィールド(31歳、内野手、右投げ右打ち、180cm、背番号9)

意外な長打力を見せた控え内野手

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2021年の成績

打率 本塁打 打点 OPS 盗塁
.218 10 39 .659 5

2022年はメジャー最低年俸(70万ドル)での契約。

テキサス州出身。2013年アマチュアフリーエージェントでアストロズと契約してプロ入り。2019年にメジャー昇格したが、その後は出場機会に恵まれず2020年オフにDFAされた。それをエンゼルスが拾ったものの、翌年2021年4月には再びDFAされた。その後マリナーズ所属となったが6月に再びDFA。ところがそれを拾ったのはまたもやエンゼルスだった。エンゼルスはレンドーンのケガで内野手が不足という事情があった。

7月以降主に三塁手として起用され、後半戦に限ると大谷に次ぐ10本塁打を放って意外な長打力を見せて2022年の契約を勝ち取った。レンドーンが復帰し、ウォルシュ、フレッチャーとレギュラーが固定している内野ではなかなか出場機会をつかむのは大変だが、貴重なユーティリティプレーヤーとして活路を見いだして欲しい。


テイラー・ウォード(28歳、外野手、右投げ右打ち、185cm、背番号3)

第4の外野手。守備力を強化してレギュラー獲得に挑む

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2021年の成績

打率 本塁打 打点 OPS 盗塁
.250 8 33 .769 1

2022年はメジャー最低年俸(70万ドル)での契約。

オハイオ州出身。2012年にレイズから指名を受けるもプロ入りせずに大学進学、2015年エンゼルスがドラフト1巡目(全体26位)で指名してプロ入り。契約時は捕手としての指名だったが、2018年に三塁手にコンバート、さらに2019年は外野手も兼任するようになった。

メジャー昇格は2018年。2021年はマイナーで開幕したが、プーホルスの退団、レンドーンやトラウトのケガなどで外野での出場機会が回って来た。最終的に65試合に出場して、打率 .250、8本塁打、OPS .769とまずまずの成績を残した。一方で外野、内野、そして時には捕手として守備につくこともあったが、いずれも未熟さが目立ち守備面での成長が望まれる。

2022年のスプリングトレーニングでは14試合に出場して、打率 .306、3本塁打、OPS .970と打撃面では素晴らしい成績を残した。トラウト、アデル、マーシュに次ぐ第4の外野手として開幕ベンチ入りしそうだ。


タイラー・ウェイド(27歳、内野手、外野手、右投げ左打ち、185cm、背番号14)

快足を誇るユーティリティプレーヤー

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2021年の成績(ニューヨーク・ヤンキース)

打率 本塁打 打点 OPS 盗塁
.268 0 5 .677 17

2022年はメジャー最低年俸(70万ドル)での契約。

カリフォルニア州マリエッタ出身。2013年ヤンキースがドラフト4巡目(全体134位)で指名してプロ入り。メジャー昇格は2017年。2021年11月にDFAされ、その後エンゼルスへトレードされた。

ヤンキース時代は内外野どこでも守れるユーティリティプレーヤーで、長打力はないがしぶとく四球を選ぶ選球眼の良さが持ち味。何よりもマーシュ、トラウト、アデルらと並ぶ俊足の持ち主で、控え選手ながら2021年は17盗塁を記録している。終盤の1点が大事な局面で代走、盗塁、シングルヒットで得点というパターンは意外と多い。そういう場面で盗塁が期待できるウェイドのような走れる選手は貴重である。


ホセ・ロハス(29歳、内野手、外野手、右投げ左打ち、183cm、背番号18)

キャンプで突如覚醒したユーティリティプレーヤー

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2021年の成績

打率 本塁打 打点 OPS 盗塁
.208 6 15 .676 2

2022年はメジャー最低年俸(70万ドル)での契約。

2016年のエンゼルスのドラフト36巡目指名(全体1086位)。全体1000位を超えるくらいの順位になるとほとんど期待されていないレベルだ。それでもウォルシュ(2015年ドラフト39巡目、全体1185位)のようにレギュラーを掴み、オールスターに出場する選手もたまに出てくるのが面白いところだ。

エンゼルスのお膝元、アナハイム市の出身。メジャー経験はなかったが、2021年のキャンプで30打数10安打( .333)、2本塁打、OPS 1.154と頭角を現した。そしてレンフィーフォがマイナーに落とされ、バレトはケガで出遅れ、ロハスが開幕ロースターの座を掴んだ。一塁、二塁、三塁に外野も守れるので内外野のバックアップとして貴重な存在になったが、打撃の方では粗さが目立ち、打率 .208、6本塁打、OPS .676と平凡な成績しか残せなかった。

ところが2022年のスプリングトレーニングで突如ロハスが大爆発した。16試合で23打数12安打、打率 .522、3本塁打、OPS 1.708と驚異的な数字を叩き出したのだ。これだけの数字を残せばやはりメジャーで使ってみたくなる。このまま開幕メジャーの座を勝ち取れるだろうか。これだけ打撃好調なので、フレッチャー二塁、ロハスがショートという布陣で行ってみてもらいたい。


マット・タイス(26歳、内野手、右投げ左打ち、183cm、背番号23)

なぜ捕手として育てなかったのか疑問だ

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2021年の成績

打率 本塁打 打点 OPS 盗塁
.143 0 0 .393 0

2022年はマイナー契約でのスタート。

2013年にレッドソックスが32巡目で指名したがそれを断って大学に進学。その後2016年ドラフト1巡目(全体16位)でエンゼルスが指名。2019年メジャー昇格し53試合で8本塁打を放ってなかなかの長打力を見せたが、打率( .211)は今ひとつだった。2020年は出場8試合にとどまり足踏み状態が続いた。2021年も開幕はマイナーで迎え、結局メジャーではわずか3試合、8打席の出場で終わった。

元々アマチュア時代は捕手だったが、プロ入り後は打撃を活かすために一塁手にコンバートされた。しかし全く捕手を育てられないエンゼルス、せっかく良い素材の捕手を指名したのになぜ一塁にコンバートしてしまうのか理解できない。まして一塁はプーホルスがいるので簡単にレギュラーになれないのはわかっているのに。同じ事がやはりアマチュア時代に捕手だったテイラー・ウォードでも言える。

結局タイスは打撃でも芽が出ず、マイナーでくすぶったままである。最初から捕手としてキチンと育てていれば今頃はスタッシのバックアップとしてそれなりの出場機会を得ていたはず。そうなっていればわざわざ守備も打撃も走塁もボロボロのカート・スズキと再契約することもなかったはずだ。エンゼルスの選手育成策が一貫しておらず、チグハグなのを実感する。


ルイス・レンヒーフォ(25歳、二塁手、遊撃手、右投げ左右打ち、178cm、背番号4)

小柄な身体でブンブン振り回す打撃は確実性に欠ける

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2021年の成績

打率 本塁打 打点 OPS 盗塁
.201 6 18 .556 1

2021年はマイナー契約スタート。

ベネズエラ出身。2014年にシアトル・マリナーズと契約してプロ入り。その後レイズへトレード。2018年4月、エンゼルスが元ドラ1の一塁手CJ・クロンとの交換で獲得した。クロンはエンゼルスでは余剰戦力気味だったが、それなりに数字を上げていたクロンとの交換ではエンゼルスがだいぶ損した印象だ。

2019年4月にメジャー昇格すると、ラ・ステラ、シモンズ、コザートら内野手の相次ぐ故障もあって90試合に先発出場したが、打撃成績は平均以下だった。

2020年は33試合で90打数14安打( .156)、OPS .469と低迷。スピードはあるがバッティングはまだまだメジャーレベルにない。2021年の開幕もマイナーで迎え最終的には54試合に出場も、打率.201、6本塁打、OPS .556と伸び悩んだ。

2022年スプリングトレーニングでも8試合で、打率 .211、0本塁打、OPS .568と調子は上がらず、マイナースタートとなった。もう何年も打撃が上向く傾向が見られないのでこのままフェードアウトしてしまうかもしれない。

ドジャースとのトレード話
レンヒーフォの名前が大きく報じられたのは2020年2月上旬にドジャースとのトレードが浮上した時だ。エンゼルスは36本塁打を放ったピーダーソン外野手に加えて、ドジャースで4番手の先発投手だったストリップリングも獲得するという。それだけでも十分魅力的な話なのだが、その交換相手がなんとレンヒーフォ(あとマイナー選手)というのにビックリした!

OC Register紙:内野はレンドーンで大補強!残るはシモンズ延長問題(2020/2/5)

しかし何をとち狂ったかトレードに時間がかかっている事に腹を立てたオーナーのモレノが、ケツをまくってトレード話から離脱してしまったのだ。こんなに美味しいトレードを蹴ってしまうとは何と愚かなオーナーかとファンを激しく失望させた。

OC Register紙:外野はアップトンの復活とグッドウィン次第(2020/2/10)

一方でドジャースがレンヒーフォにそれほどの価値を見いだしていたことに驚いた。ドジャース側の事情もあろうが、控えの内野手で目立った活躍もしていないレンヒーフォにレギュラー2人を差し出してもいいと考えた理由は何なのか?全くの謎であるがその答えはレンヒーフォ自らが出すしかない。

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